前世療法(前) 

 前世治療を専門にやっている人たちもいるし、それに興味をもっている人も多いでしょうから、それについての是非を語るわけではありません。
 まあ、話半分に聞いていただければ助かります。
 私も実は、過去世(かどうかはわからないけれど、とぼかしたくなる私がいますが)を幻視(?)したり、不思議な経験、不思議な感覚を味わったりします。
(文字にするとそういう言い方になりますが、私自身は、それを、ごく当たり前だと思っています。ただ、心理学を標榜している手前、小さな声で言いたいんです。)
 過去に催眠誘導しているとき、そういうことが起こったこともありました。

 会員さんの中も、前世治療を受けてきた人たちがいます。
 過去世のストーリーについて、そういう過去世の事実性を否定するものではありません。
 でも、ここからが面白いのです---。

 過去も未来も、あるいは過去世も来世も、いま現在、あるいは現世に現れている。
 もっと言えば、すべてが「今の瞬間」に凝縮されている。
 これが、自分の体験を通して実感している、私の中では実証済みの「持論」です。
 
 例えば、いまあなたが、いじめられているとします。すると、あなたは自分の過去を振り返るとき、いじめられた体験を思い出すでしょう。
 どうしてだと思いますか。
 自分では、自然に、その過去の場面が思い出されていると、多くの人がそう思うでしょう。

 ところがそうではないんです。
 あなたの意識というのは、そんなに粗雑で荒っぽくはないんですよ。
 もし「現在の私」が「いま、いじめられている」ことにこだわっているとしたら、この「現在の私」を基準にして、星の数ほどある過去の出来事から、わざわざ「過去の、いじめられている」部分を切り取ってくるのです。

 ここも「自分中心」の生き方と共通するものがありますね。
 「現在の私」を中心にして、「過去の私を観る。未来の私を観る」という発想です。
 いかに、「自分中心」という概念が的を得てるか、です。

 だから、あなたの過去の出来事は、過去としての事実であるかも知れないけれども、「現在の私」自身がそうだからとも言えるのです。

 つまり過去から言えば、「過去のあなた」があるから、「いまのあなた」がいるし、「未来のあなた」もそうなっていく。ともいえるし、現在から言えば、「いまのあなた」がこうだから、「過去のあなた」がそういうふうに映るし、「未来のあなた」もそう映る、ともいえるのです。
 そしてまた、それはどれもあなたにとっては、事実です。
 飽くまでも、それは「あなたにとって」ですが。

 実は、この「意識の概念」が、過去世を観るときにも当てはまるということなのです。(つづく)