花粉症と意識の関係

最近、社会意識として、「他者は自分を攻撃し傷つけ脅かす存在」
とみなす“敵”意識や危機意識が顕著になってきている。
 現実的には、日本社会が日常生活で、生命維持の脅威に晒されるこ
とは滅多にない。一言でいうとそれは、過剰な競争社会が生み出した
歪みの結果ではなかろうか。

 しかもそれは、電子機器が氾濫している日本社会特有の、まさに、
頭の中で創り出しているバーチャル的な世界での「生命の危機」意識
だと言える。

 否定的意識が恒常的になると、自律神経の、とりわけ交感神経が刺
激され続ける。過度の身体的緊張や、感情面での怒りや恐怖があると、
交感神経が恒常的に興奮し続ける。このため、交感神経が支配する副
腎からはアドレナリン、交感神経からはノルアドレナリンが多量に放
出される。アドレナリンは、血小板を刺激して、血液の粘着、凝固、
凝集を促進させる。ノルアドレナリンは、血管を収縮させ、血流を乱
し、血圧上昇を促す。また、これら交感神経刺激物質は、血糖値上昇
にも関与しているという。

 さらには、白血球が自律神経の支配を受けていると唱える学者もい
る。白血球には2種類ある。細菌を貪食する顆粒球、免疫を司るリン
パ球である。交感神経が緊張状態のときは顆粒球が増え、多量に発生
する活性酸素が、組織破壊を起こすというのである。

 他方、副交感神経は免疫系を司るリンパ球を支配していて、免疫機
能を高めるために、心拍、血圧などの循環作用を調節し、消化器機能、
排便・排尿機能、消化液の分泌作用といったものを亢進させる。カウ
ンセリングの最中に、急に便意や尿意を催すクライエントが多いのは、
交感神経の緊張がほどけて、副交感神経の働きが促進されるからであ
る。

 ところで動物実験で、こんな事実が観察されているという。ラット
を自由に動ける状態にして電気ショックを与えると、交感神経の亢進
が起こる。しかし、ラットを拘束して同じ刺激を与えると、副交感神
経が優位に立ち、言うなれば「フリーズ」状態となる。

 つまり、困難な状況を回避できるという認識があるときは交感神経
が興奮し、絶望的だと認識すると副交感神経のほうが優位に立つ。
 実に、この反応は「無気力、無関心、無表情」や「無感情、無感動」
といわれる日本の若者の姿と重なる(最近は、若者だけでなく全般的
に)。この傾向も「副交感神経の優位」と解釈すれば合点がいく。実
際、その言動パターンを観察していると、明らかに身を竦ませて「動
けない」心理状態が窺える。

 「自分中心」心理学では、思考パターン、言動パターンを、大きく
は2つに分類している。この分類が「交感神経」型と「副交感神経」
型とに合致する。身体の機能上のメカニズムと心理とは、これほど緻
密に関連しているのである。

 能書きが長くなったが、この副交感神経の過剰で起こる代表的な疾
病が、アレルギー疾患である。
 こんな理由から、若者を初め、あらゆる世代層に花粉症を始めとす
る様々なアレルギー疾患が蔓延しているのも頷ける。
 
 これを「意識の法則」で言えば、花粉症は、前記のような社会や人
生に対する微妙な諦め感が土台にあった上で、人が側に近寄るのを毛
嫌いしている意識である。
 それを、鼻で嫌っている。

 その毛嫌いには、相手を人間と見ていないような侮蔑感や軽蔑感が
こめられている。家庭で娘が、自分の洗濯物と父親の洗濯物と一緒に
洗うのを毛嫌いするのにも似た嫌悪感である。
 例えば最初はそれが父親だったのが、だんだん他者に対しても、そ
んな意識を抱くようになる。
 自分の領域に侵入されることを警戒し、それに敏感に反応しながら
も、自分が「フリーズ」して動けないから、鼻で相手を退けようとす
る。そんな嫌悪感である。

(そもそもは、そんなふうに毛嫌いするようになったのは、「自分の
意志を大事にして主張する」のが「怖い」という思いから発生してい
るものである。主張できずに諦めて、人生そのものを「まあ、こんな
もんだろう」などという呟きでやり過ごしているのではなかろうか。)

 肉体は細胞で成り立っている。血液も細胞である。
 意識と身体の関係でいえば、単純に、肯定的な意識で身体の特定の
箇所を意識するか、否定的な意識でそこを意識するかで、細胞は緊張
したり弛緩したりする。
 自分が意識する通りに、細胞も、緊張したり弛緩したりする。
 ある一定の固定したマイナス意識を抱くということは、特定の細胞
を緊張させて攻撃していることになる。
 それが恒常的に続けば、当然疾患となるだろう。
 
 これが本当かどうか。「自覚して腑(府)に落ちれば」、それだけ
で症状が軽減するから、変化があった人は教えてほしい。

 ちょっと余談だが、数十年前、杉の花粉が、こんな形で我々に影響
を与えると誰が予測しただろうか。しかもそれは、「副交感神経が優
位」になる、つまり“諦め感”が蔓延していく社会意識に比例して、
杉が育っていって花粉を舞い散らせて花粉症を引き起こすという現象
を、読者はどういうふうに受け止めるだろうか。