どうしたら自信がもてるのだろう(下)

前回書いたように、
「自分が何かに秀れていて、みんなが自分を称賛してくれれば、自信
はつく」
 そう思う人も多いだろう。他者からの承認があれば、自信がつくと。
 まさにマズローさん言うところの人間欲求5段階説である。
 けれども恐らく、「他者からの承認」を得ても、本当の自信は得ら
れないだろう。

 他者から認められて初めて、自分が自信がもてるとしたら、他者が
称賛してくれなければ、自信がもてない。称賛してくれなくなった途
端に、自信が無くなる、ということになるからだ。
 むしろ、こんなふうに「他者からの承認」で自信を得ようすればす
るほど、反対に、相手の顔色ばかりをうかがうようになって、不安や
焦りが増大していくだろう。

 芸能人や著名人が、そんな自信に支えられていて、それを失くした
とき、自殺してしまう人がどれほどいるだろう。

 他者に左右されて、認められなければすぐに自信喪失して、自殺ま
で果たしてしまうような脆さが、本当の自信といえるだろうか。

 本当の自信というのは、他人にひけらかすものではなくて、自分が
自分をどれだけ認められるかということである。というのは、誰でも
頭では分かっていることかも知れない。
 けれども、そう自分に言い聞かせながらも、
「じゃあ、そうなるには、どうすればいいんですか」
 とまた、自分の自信のなさを覗かせながら、聞きたくなるだろう。

 自信というのは、とりもなおさず「自己信頼」ということであるだ
ろう。あるいは、「自分の価値を自分が、心から認めているかどうか」
であるだろう。

 では、それをつけるためにはどうするか。
 一つは、自分の「見方」そのものを変えることである。
 「欠点を長所に変える話し方」(PHP研究所)にも書いているこ
とだが、どんな状況の場合でも、その状況をどう「判断するか。どう
見るか」は自分にかかっている。
 
 プラス・マイナスあるいは、メリット・デメリットもそうだが、す
べてにおいて、その両面が、その状況に存在する。
 自分の目に、それが映らないだけである。
 自分の無意識に気づかなければ尚更、プラスもマイナスに見える。
 例えていうなら、PHPの本の内容の全部が、ひとつの場面の「プ
ラス面とマイナス面」とを、それぞれの面から捉えて述べているとも
いえるのである。

 その「見方を変える」一つの方法として、「結果」ではなく、「プ
ロセス」を見る癖をつけることである。
 これが“恒常的な癖”となれば、自分のこれまでの世界が180度
転換する。

 カウンセリングやセミナーで、繰り返し強調するのは、
「自分の最も辛かった状況を忘れないようにしてほしい」
「そんな過去の状況と“今”を比べれば、すべてが肯定的に見えるは
ずだ」

 我々は、脳の構造からして、物事を「比較する」ことをやめること
はできない。それでつい、他者と自分を比較する。そんな「比較する」
機能を活かして、他者よりも、自分の過去と比較するといい。
 それも、自分の最悪だった状況と比較して、現在の「できていると
ころ、恵まれているところ、成長しているところ」を評価する。

 それも、敢えてイメージで過去と現在を再現させて比較したり、言
葉にしてほしい。そして、十分に感じられるぐらい実感し“味わう”。
 このプロセスを“味わう”癖が、自己信頼を育て、自分の価値を高
めるのである。