あなたより、相手のほうがもっと恐れている

本当は、こんなことを言いたいけれども、あなたは、
「これを言ったら、嫌われるんじゃないか。相手が怒り出すのではな
いか」
 などと恐れて、ついつい言葉を飲み込んだりしていないでしょうか。
 でも、あなたがそんなふうに、相手から嫌われるのを恐れていると
き、同じように、相手もあなたから嫌われるのを恐れています。
 しかもあなたが、もしちゃんと主張しようと心に決めたとき、その
結果を恐れるのは、本当は、あなた以上に、相手のほうかも知れない
のです。

 あなたが「相手から嫌われる」のを恐れて我慢しているとき、あな
たは、自分より相手のほうを上に感じているでしょう。
 相手のほうが主導権を握っていて、
「怒らせたら、すぐにでも別れを言い渡される」
 と思っているかも知れません。
 これを「支配者と被支配者」の関係でみていくと、あなたは、どち
らのほうが、より別れを恐れていると思いますか。
 あなたがもし被支配者の立場だとしたら、「自分のほうが恐れてい
る」と思うでしょう。
 しかし、客観的事実としたら、それは、支配者のほうなのです。

 それはこういうことです。
 例えば、あなたが被支配者の立場で、支配者の言うことに従って尽
くしてきたのだとしたら、あなたは、少なくとも、支配者よりは物事
の処理能力は高いはずです。
 反対に、支配者のほうが、それゆえに、自分で自分のことを処理す
る能力は劣っています。
 人にやらせようとすることは、実は、こんなふうに、自分の能力を
自ら劣らせているようなものと言えるのです。

 こんな関係のあなたと支配者が、ここで別れるとしたら、どちらの
ほうがより自立していけるでしょうか。
 あなたは、相手と別れて依存できない辛さを感じるかも知れません
が、少なくともあなたは、物事を処理する能力はあります。

 一方、支配者のほうは、誰にも依存できないと同時に、物理的にあ
なたに依存していたので、処理能力もありません。
 支配者は、物心両面で、何もできずに依存していたのに、それが、
物心両面で、依存できなくなってしまうことになるのです。

 支配者が威張っていられたのは、あなたが側にいて、黙って言うこ
とを聞いてあげていたからです。
 そのあなたがいなくなれば、支配者は、孤独になると同時に、具体
的に何もできなくなっていくのです。
 ですから、被支配者と支配者では、本当は、心理的には被支配者の
ほうが勝っているのです。
 あなたを必要としているのは、より相手のほうなのです。
 そういうふうに考えると、「言うのが怖い」という気持ちが、少し
減ってくるのではないでしょうか。