逃げたほうがいい

いまこれをしないと、逃げることになるから。
 ここで踏ん張らないと、人に「逃げた」と思われてしまうから。
 だから「逃げちゃいけない」と、あなたは自分に言いきかせてる。
「逃げないで、頑張らなければならない」と自分に押しつける。
 ねえ、けれども、どうして逃げたらいけないの。
 逃げないで踏ん張ろうとすれば、あなたは逃げないでいられるかな
あ。
 逃げないで踏ん張ろうとすれば、あなたは怖くなくなるのかなあ。
 逃げないで踏ん張ろうとすれば、あなたは逃げない「勇気」が育つ
と信じているのかなあ。
 じゃあ実際に、あなたは逃げないでいたら、強くなった?

 あなたは、目の前に危険が迫っていたら逃げるでしょう。それって
当然のことだよね。
 だったら、ねえ、どうして逃げてはいけないの。
「逃げる」という反応は、人間の細胞の中に、ちゃんと組み込まれて
いる正当な反応なんだよ。
 いまは「やめたほうがいい」と、あなたの無意識が訴えているとき、
その無意識に抵抗するのと、その無意識の訴えを尊重して、自分の意
志をもって退くのと、どちらがほんとうは強いんだろう。
 どちらが自分を大事にしているといえるんだろうね。

 こんなとき、「逃げることになるから」とつぶやくより、
「自分の意志でやめるんだ」とつぶやいてみようよ。
 もういちど、つぶやいてみて。
 どうだろう。どんな気分がした?
「逃げることになるから」
 と、恐くても震えながら踏ん張っているのと、
「私は自分の気持ちを大事にしたいから、意志をもってやめる」
 とつぶやくのと、あなたはどちらのほうが気持ちがいいだろうね。

 あなたがいま信じている「逃げる」というのは、ほんとうは、
「自分の意志でやめる」
 ということができるんだよね。
 自分を認めるってこういうことじゃないかな。
 自分の気持ちを尊重してあげるって、こういうことじゃないかな。

 あなたには自分の気持ちが楽なほうを「意志をもって」選択してほ
しいな。
 気持ちが楽なほうを選択しても、絶対に大丈夫なんだから。
 それが、自分を信じるってことでもあると思うよ。