感情を解放しなければ意志は育たない(後ー2)

前3回では、
「意志」はあなたの欲求や願望から生まれる。その欲求や願望は、感
情から派生している。
「意志が強い」というと、筋肉質のスポーツマンタイプを思い浮かべ
がちだが、それは「脳幹の強さ」であって、「意志の強さ」とは異な
る。本当に意志の強い人は「自分の気持ちや感情」を優先させている
人である。多くの人が「思考」を優先させがちだが、無意識的には、
すべての人が「感情を基準」に生きている。
 こんな話をしました。

 多くの人が、知性から人間らしさや意志が生まれると信じていると
思います。
 けれども、「人間脳(大脳新皮質)」の意志は、どちらかといえば
「意志」ではなくて「意思」ですね。
 これは「想い」ではなくて「思い」。それも、感情のない「思い」
つまり「思考」。
 映画「アイロボット」のあの、機械的な意思といえば、手っ取り早
くイメージできると思います。(これも映画を観てない人は御免なさ
い)

 人間脳の右脳では、どんなイメージを描くこともできます。
 ヒマラヤ登山することも、宇宙飛行士になることも、大富豪になる
ことも、海底旅行することも。卑近な例では、仕事で成功することも、
幸せになることも、恋人とうまくいくことも。

 例えば「仕事で成功している」イメージは浮かんでも、プレゼンや
セールストークができない。
 「恋人と愛し合って仲良くしている」イメージを浮かべることはで
きても、実際に恋人と一緒にいると、争ってしまう。

 イメージ(理想、空想)は、幻想に近いのかも。
 だから、イメージはイメージとして、そこでとどめておいたほうが、
無難では。だって、それは元々ゴールのない幻想だから、果てしない。
いわば、無間地獄のようなもの。
 そんなイメージを後生大事にして、そのイメージに自分を合わせよ
うとすれば、苦しくなるのは当たり前ですよね。

 イメージと欲求は違います。
 山のてっぺんで、一人で生きて、理想や平和を語ることはできます。
 けれども、その人が山から下りてきて、人と一緒に暮らしたら、何
が起こると思いますか。
 それは、恐らく「争い」でしょう。
 頭と口では「平和」を語り、実際の行動は「争い」になる。

 人と一緒に暮らしたことのない人が、人と平和に暮らすには、まず
人と一緒に暮らしたいと「欲求する」ことから始まります。
 
 だから、人間脳のイメージを優先させるより、「感情脳」の欲求か
ら始めてほしいのです。

 その前に、まず、「好き嫌い、苦楽、快不快」を基準にして、自分
の欲求に気づいてほしい。

 仮に理想とするイメージがあるとすれば、実現させたいと「欲求し
た」とき、初めてそれが、イメージではなくなって、現実のものとな
る。仮にそれが遠い理想であっても。

 その欲求が、感情脳(大脳辺縁系)の働きなのです。

 「~したい」という欲求が生まれて初めて、それを実現させようと
「意志」を持って「~する」と決断し、実際に「行動する」となりま
す。

 だからこそ、イメージしただけの幻想を自分に押し付けるより、実
社会の中で、人と一緒にいて、自分の感情を大事にして「好き嫌い、
苦楽、快不快」を基準にして、自分の感情を優先させたほうが、「幸
せと成功」を手に入れることができるのです。