「お金持ちになる」「愛される」「成功する」

 最近、目に付くのは、「お金持ちになる」「愛される」「成功する」といった本である。「幸せ」という漠然としたものよりも、もっと具体的かつストレートなタイトルが並んでいる。

 不景気が続くと、脳の構造として、脳幹が刺激される。脳幹は、生命の危機感を感じるところである。所有欲や、勝ち負け脳だから、こんな本が売れるということは、多くの人が、生命を脅かされるような危機感を覚えているのだろう。
 まさに、弱肉強食の世界となりつつある。

 と同時にそれらの本は、イメージ、つまり右脳を刺激するようなものが多い。

 では、実際に、イメージで、それが効果があるのかないのか。

 大和出版から出版された『人間関係に奇跡を起こす83の方法―やり方ひとつで天国・地獄』。この本も、分類で言えば、これらの本の中にはいると思う。

 けれどもちょっと(個人的意見でいえば、まったく)違う。
 それは、私のスタイルが、感情を基準にしているからである。つまり、180度異なる事例を対比させている。

 この違いを、今度の本のスタイルで書けばこうなる。

◎地獄その1

 あなたは最近、「お金持ちになる」「成功する」「愛される」といった本をたくさん読んでいます。あなたは本を読んで納得します。
「そうか、イメージすればいいんだ。毎日イメージすれば、それが実現する」

 自分のイメージした通り、考えた通りに、現実は「成る」。
 即、実行。あなたは、毎朝30分、その本の通りに励みます。
 イメージの中では、あなたは望むものすべてを叶えています。

 ところが、現実には、そうはなりません。
 イメージでは、どんどんお金が回ってくるはずなのに。
 イメージでは、恋人とうまくいっているはずなのに。

 あなたは自分の毎日をみて、こう叫びたくなります。
 なんだ、ちっとも実現してないじゃないか! 

 いいえ、ちゃんと実現しています。

 あなたは毎朝、30分、「お金持ち」「成功」「愛される」イメージを実践しています。けれども、おおげさに言えば、残りの23時間30分、「ちっとも、うまくいかないじゃないか」と、焦ったり、不安になったり、腹を立てています。

 それがちゃんと実現しているのです。

 あなたの中には、「お金持ち」「成功」「すてきな恋人」が、イメージとして強くインプットされています。
 これはあなたの理想像です。

 あなたはいつのまにか、幸福になるには、こんな理想像を「達成しなければならない」と思い込みはじめます。

 ところがあなたの現実は、その理想像とは、まるで掛け離れています。
 あなたは、自分の中にある「理想像」と、自分の「現実」とを比較しはじめます。

 このギャップが大きくなるに比例して、あなたは、いっそうマイナス感情に囚われて、それが実現していくのでした。

◎地獄その2 

 あるときあなたは、バスに乗りました。あなたは、二人席の奥のシートに座りました。
 あなたはシートに座って、「お金持ち」「成功」「すてきな恋人」をイメージするレッスンをしていました。
 隣に人が座りました。

 あなたはイメージするのを邪魔されたような気がして、ちょっとカリッときました。

 目的地が近づいて、あなたは降車のボタンを押しました。
 あなたは体を動かしてソワソワします。
 これがあなたの「私、降ります」の合図です。

 ほとんどの場合、そうすることで、黙っていても、隣の人が、もぞもぞと降りやすいように動いてくれます。
 あなたは黙って隣の人の前を擦り抜けて降ります。
 お互いに無言です。

 いつものように、あなたは「降りる」合図を送りました。
 ところが、鈍感な隣の人は、まったく気づきません。
 あなたは「どけ、この〇〇!」と心で叫びました。そして、無言で、いかにも不快そうに、にらみをきかせました。
 
 それでも通用しないと知ったあなたは、無言で腰を上げました。そして、隣の人と前の座席の背もたれの間に、自分の体をねじ込ませ、隣の人のひざを、わざと蹴飛ばすような勢いで飛び出したのでした。

◎天国

 あなたは感情を大事にしています。「苦楽・好き嫌い・快不快」を基準にしています。
 とくにあなたは、五感のプラス感覚やプラス感情を重視しています。
 イメージは、想像の世界です。
 プラスイメージすれば、プラス気分が生まれます。
 けれどもそれは、現実の生活とは密着していません。
 
 ひとりでだったら、イメージでプラス気分に浸れます。
 けれども、その気分は、ひとたび人が関わってくると、泡のように消えてしまいます。

 あなたは、生活に密着した五感のプラス感覚やプラス感情の、その“実感”が、「愛」にも「成功」にもつながると、体験的に知っています。
 
 あるときあなたは、バスに乗りました。あなたは、二人席の奥のシートに座りました。
 隣に人が座りました。

 人肌を感じるのが好きなあなたは、二人席に座るのも好きです。

 目的地が近づいて、あなたは降車のボタンを押しました。
 バス停が近くなって、あなたは、
「降りますので、よろしいですか」
 と隣の人に声を掛けました。

 そうやって声を出すとき、あなたは、自分のその声の響きの気持ちよさを感じています。それは、自負心にも似た心地よさです。

 隣の人が、気持ちよく「どうぞ」と席を立ってくれたので、あなたは、何となく、その瞬間、ほのぼのとした気分になりました。
「ありがとうございます」
 この「ありがとう」は、人に感謝していると同時に、自分に向けても感謝していることになります。

 自分に感謝するというのは、自分を認めること、自分の価値を高めること、自分を信じることにつながっていきます。

 こんなふうに、あなたは、日常のささやかな場面でも、愛を感じることができます。自分を大事にする「行動をとる」ことができます。

 と同時にそれはまた、あなたの、未来の「愛と成功」のエネルギーを蓄積させていることにもなるのです。

 ※こんな例題が、著書で伝えたい「自分中心心理学」です。
(実際の一項目の分量は、もっとシンプルで少なめにまとめています。)