お墓まで

「人生にゴールはない」という話を度々するが、ついでにもう一席、小話を。
 遠い親戚の話。

 法事で親戚が一堂に会した。
 もう自分たちの親がお迎えの近い年齢になっていることから、財産分与の話になった。

 不動産についても、誰それが、あそこをとるなら、俺はこの場所だ。
 いいや、そこは私だなどと、かまびすしい。

 もらえるものなら、何でももらいたい。
 権利を主張できるものなら、何でも主張しておきたい。
 酒が入っているものだから、本音ものぞく。
 土地でも何でも、身の回りにあるものはお金に換算する。

 その勢いと気分で、お墓の話になると、
「ご先祖様よりも、大きくて値段の張るものを買った」
 骨壷の大きさや値段にまで話が発展していった。

 そのとき、次男が酔った勢いで言った。
 一族を祀る墓に、
「俺にも、入る権利がある」

(今のお墓の規模では、骨壷を収納するスペースが、せいぜい二人分しかなかったのだった。)

 “年功序列”でいえば、一つは大体決まってしまう。
 すると、残りは一つ……。

 何の話か? もちろんお墓の話である。
 そのとき、嫁さんが言った。
「早い者勝ちだね」

 ……フーン。早い者勝ちねえ。まあ……(絶句)。

 笑い話のようだが本当にあった話。
 ゴールを急ぐ人は、この話が笑えない。