聞いてみるのが怖い

 今日お会いしたKさんへ。
 最近、多かった相談です。

 例えば私が、
「相手が何を考えているかは、わからない。わからないときは、あれこれ勝手に自分で憶測して、ああだこうだと悩むより、相手に聞いた方が早いでしょう」
 と答えたとする。相手は、
「ああ、そうですよね。聞いてみたほうが、簡単ですよね」
 と応じる。

 わからなかったら、相手に尋ねる。シンプルである。
 
 ところが実際の場面になると、相手に「聞く」ことがためらわれ、とっさに言葉を飲み込んでしまう。
 なぜ聞くことをためらってしまうのか。

 例えば、相手が不機嫌そうな表情をしている。それを見ていると、傷つく。そこで、
「ねえ、不機嫌そうにしているけど、私に対して何か怒っているのかなあ」
 と聞いたとする。すると相手から、
「うるさいなあ。そうやっていちいち口を挟むから嫌なんだよ」
 などと、否定的な言葉や攻撃的な言葉が返ってきて、さらに傷つくことになる。

 それを予測するから、相手に聞くことができない。
 傷つくんだったら、いっそのこと「黙っていよう」となる。

 自分がダブルで傷つかないために、こんなとき、どう答えたらいいのだろうか。

 単純に、自分自身が、言いたいのに言えなかったのは、なぜか。何を恐れていたのか。それをそのまま言葉にすればいい。
 例えば、
「やっぱり、予測した通りだった……。私が何か言うと、あなたが、そんな反応を返してくるだろうなって、予測してたんだ。だから、傷つきたくなくて、今まで言えなかったんだ。
 でも、やっぱり、予測した通りの反応が返ってきて、ほんと、残念だよ」

 感情の言語化をするとしたら、
「残念だね。悲しいよ。傷つくなあ。つらいなあ。惨めだよ。悔しいよ」
 こんな言葉になるだろうか。