ほんとうは「相手が私に言わせない」

「どうしても、相手に、自分の気持ちを言うことができないんです。自分の気持ちを素直に言ったほうがいいとわかっているけれども、相手を前にすると、何も言えなくなってしまうんです」
 と、いう声をしばしば聞く。

 自分の気持ちを言っても、相手から自分を否定するような返事が返ってくると、言ったことで、余計に傷ついてしまう。だったら、傷つかないために黙っていたほうがいい。

 そう考えて黙ってしまう人が少なくない。

 ところが我慢しながらも、他方では、「言えない私が情けない」とばかりに、自分を責めてしまう。
 こんな気持ちになるのは、もちろん、我慢するからで、我慢するからいっそう「自分がダメだ」という気持ちになって自信を無くし、ますます言えなくなってしまうと悪循環になっている。

 こんな「言えない」場面を、自分だけの問題として捉えるなら、
「言えない私がダメだ」
 と自分を責めたくなるのも無理はない。

 しかし、これを「関係性」で捉えるとどうだろう。
 「もっと自分中心でうまくいく」の本でも書いているように、こんな関係性は、「超感覚」とも関係がある。

 もしあなたが、自分を責めたくなっているとしたら、こんなふうに考えてみてほしい。

「私が相手になかなか自分の気持ちを伝えることができないのは、実は、私に問題があるのではなく、相手が、私の話を聞く気持ちを持てないでいるからだ。相手が、私の話を聞くのを恐れているからだ」

 相手が私の話を聞くのを恐れている。 
 相手が“恐れのエネルギー”や、心を閉ざして“拒絶のエネルギー”を発している。
 それを、私の超感覚が察知するので、「私が相手に言えない」という感覚になってしまうのだ。

 だから、「私が相手に言えないのではない。相手が私に言わせないのだ」と。

 こんなふうに考えると、自分を責めないで済むだろう。

 いつも自分を責めてしまう人、何でも自分のせいにしてしまう人は、これを心に刻んでおいてほしい。

 とりわけ家庭の中で、自分に大きな問題がある場合、
「私が家族のお荷物になっている。私さえいなければ、家族は幸福になれるはずなのに。私が家族の足を引っ張って、迷惑をかけている」
 などと自分を責めている人がいるとしたら、客観的な事実を認識してほしいものである。

 あなたが問題をかかえているとしたら、それはあなたの周囲に、あなたがそうならざるを得ない状況に置かれることを(無意識に)望んでいる人がいるということを。

 少なくともそれを自覚したほうが、むしろ、その問題を自分のせいにしたり、その反動で人を責めたりといった葛藤が減少する。