どうしてうまくいかないのか

 あるサイトで、ふと、
「どんな内容がもっとも関心が高いのだろうか」
 と思ってチェックしてみたら、
 一位はさすが、ネット商売で儲ける方法。二位がお金儲けの方法。三位にちょっとエッチ系の交際という順位だった。
 心理学に関する関心度は、「その他」の中に含まれていて、ちょっぴり気落ちした。

 お金儲けも、恋愛も異性交際も、こんなに関心が高いのに、人によっては難しい。
 むしろ、難しいからこそ関心が高いともいえるのだろうが……。
(難しいと思うのは、以前書いたことがある、ゴールがないという話と一緒で、上に限界がないから、欲を出したらキリがないということでもあるだろう。)

 無意識と顕在意識の世界の両方から探るのを面白いと感じている私にとっては、その“難しさ”は、ある意味、「当たり前かなあ」と思ってしまう。

 この前のセミナーのとき、こんな話をした。
「多くの人が有名になりたい、お金持ちになりたいと、そう願っている。そのくせ、実際には、なりたいとは思っていないし、なるための行動をしようとしていないよね」

 商売の方法のひとつとして、要約すると、
「小さな会社の社長は、社長が看板だから、自分の顔を売るのが鉄則だ」
 というようなことが、ある本に書いてあった。

「顔かあ……」
 うーん、ちょっとためらう……。
「いまさら派手に顔を出して、自由を束縛されるのは嫌だなあ」
 という思いから、テレビ出演を何度か断ったことがある。

「私はほんとうに、自由が好きなんだ」
 事務所をひとりで運営しているのは、経済的理由がもっとも大きいのだが、それと同じくらい、私は、ひとりでいる空間の、その静寂さと自由さが大好きなのだ。
 その自由が保証されているから、いっそう、
「自分の好きなことを、好きにやっている」
 という気分になる。

 けれども、確かに「顔を出す」というのは、一理ある。

 冒頭の話にもどると、
「有名になりたい。お金持ちになりたい。儲けたい。そう思っているにもかかわらず、自分の名前を出したり、顔を出そうとしない」

 自分の顔を隠す。名前を隠す。
 こんな社会だから、ある面、自分を守るためには、必要なことだ。
 これが悪いわけでもない。
 むしろ、個人の自由だ。

 しかし、同時に、それが「有名になる。お金持ちになる。儲ける」にブレーキをかけている。

 なぜブレーキをかけるのか。
 理由はさまざまだろう。
 その答えが、最初に書いた「難しい」につながる。

 例えば、
・失敗をするのが怖い
・人との関係でトラブルが起こるのが怖い
・責任をとるのが怖い
・人に批判・非難されるのはつらい
 など、自分が「有名になる。金持ちになる。儲ける」よりも、「自分を守る」ことのほうが、自分にとっては重要なのである。

 「顕在意識の私」は気づいていないけれども、「無意識の私」はそれを知っている。
 だから、「有名にも、金持ちにも、儲ける」にもならない。

 つまりは、
「なーんだ、(顕在意識の私は)儲けたい、儲けたいと言っていたけど、儲けないのは当たり前かあ。俺は無意識に、自分を守るほうを優先していたのか」
 ということである。

 儲けたいのか、自分を守りたいのか。
 どっちのほうが、いまの自分にとって重要なのか。
 これを自覚してほしい。

 それが「自覚」できれば、人を嫉妬したり羨望しながら揺れているよりも、どっちを選ぶのか、自分自身の方向性がはっきりとしてくる。あるいは、いまの自分を認めることができる。

 ちなみに、ここで私が教えられたのは、
「顔を出すのは、責任や信用のひとつなんだ」
 ということだった。