顕在意識と無意識とのギャップ

 物事がうまくいかないとき、不安や焦りが起こる。
 相手を変えようとすることに、焦ったり、躍起になることもある。

 この「躍起になる。焦る」。

 こんな状態のときは、ついつい忘れてしまいがちだが、「すぐに結果や結論を出すのは無理なんだ」ということを、思い出してほしい。

 顕在意識では、自分は単に焦っているだけだ、という程度の認識しかないだろう。
 しかし、いつも言ってることだけれども、自分の顕在意識より、
「無意識」のほうがはるかに頭がいい。
 無意識は、過去も未来も見通している。
 それこそ、我々が、顕在意識にはのぼらない、“本質”の目標も心得ている。

 過去と未来のその膨大な情報量から検索し、予測し、どうなるかすら、分かっている。

 「焦る。躍起になる」という状態は、無意識が、顕在意識よりももっと多くの情報をトータルで捉えて、
「いまそれに関して結論づけるのは無理なんだ。すぐに結果が出るものではないんだ」
 と判断していることなのだ。

 無意識は、未来も見通せるからこそ、“感情”という形で、我々に警告するのである。

 ところが顕在意識は、「それでも、すぐに。いますぐに」と無意識からの警告に抵抗する。

 その顕在意識と無意識とのギャップが、「焦る。躍起になる」という状態としてあらわれているのだと、思ってほしい。

 どんなに顕在意識で「急げ、急げ」と自分の尻を叩いても、すでに顕在意識よりも遥かに賢い無意識が無理と判断しているのだ。

 仮に、そんな状態のとき、その焦りから見切り発車をしたとしても、恐らく、到達点は、同じであるだろう。
 急いでも急がなくても、結局、同じ問題に突き当たる。

 だから、そんなときは、
「急いでも無理なんだ」
 と、観念してほしい。

 観念してそう決めることで、それ以上悪い状況になるのを防ぐことができる。
 場合によっては、そう決めるだけで、流れが変わることもある。
 ただし、流れを変えるのを目的として、意図的に、“観念したふり”をしても、通用しない。そんな打算抜きに、心から、観念してほしいものである。

 そして、
「そうか。だったら、もっとゆっくり、時間をかけて、それに取り組もう」
 と決めてほしい。