焦点を絞る(1)

 セミナー等でイチローさんの話をするので、テレビ放映時間をわざわざ知らせてくださった方がいた。普段、ほとんどテレビを見ないので、気遣っていただき、ありがとうございます。

 イチローさんの番組を観て、感想を送ってくださった方もいた。

 いろいろな視点で語ることができるけれども、一点だけ。

 彼は「毎日カレーライスと焼き肉だけの食事」と話には聞いていたけれども、本当にそうだった。
 少なくとも昼食は、毎日同じカレーライスだった。

 食事のバランスを考える人にとっては、飛んでもないことかも知れない(私自身は、説明すると話が大きく逸れてしまうもろもろの理由があって、あまり気にしないが)。

 それはともかくも、同じことを繰り返しても繰り返しても飽きないということは、その度に、リセットできるということだ。

 彼は食事だけでなく、映画(DVD)も二十回、三十回と観る。
 同じ曲を何十回も聴く。

 彼は「感覚」という言葉をしきりに使う。

 第三者から見れば同じ仕草、表情だと見えても、自分の中にある「感覚」に焦点を当てると、ミクロの差でも、まったく違って感じられる。

 感覚を味わうことができれば、同じものが同じに見えない。同じに感じない。オーケストラの微妙な音色を聴きとることができるように。
 感覚だけでなく、「気分・感情」でもそうである。

 自分がいま、どんな感情を抱き、それをどう感じているか。

 そのことに対して、どれだけ自分の意識がそれを「受け入れているか」等々。
 1パーセント、0.1パーセントの違いさえ感じるだろう。

 本当は、「不安や焦り」といったものでも、この“1パーセント、0.1パーセントの差”を感じることはできる。

 同じことの繰り返しを「つまらない、退屈だ」と感じているときは、思考で捉えている。(つづく)