感覚セッション&脳活性化(1)

 カウンセリングをしていて、特に心療内科などに通っていても「なかなか、変わらない」と言って来られる人たちに共通しているのは、感覚や感情を無視し、思考にとらわれているという点です。

 自分をつらくさせているその「思考」を何とかしようとしても、その思考を、頭の中から追い出すことはできません。

「この考え方がいけないと、わかっているのですが、でも、どうしても、してしまうのです」
 というふうに、その思考から逃れることができません。

 自分をつらくさせている思考を振り払おうとして、さらに、思考で何とかしようとする。

 自己流でやっている方々が、どんなに努力しても改善しないと思ってしまう原因のひとつが、ここにあります。

 心は形に見えないように思っている人が多いのですが、そうではありません。

 感情は、見えなくても、脳の構造や働きに関心を向けると、その脳の働き方から、心を推測することができます。

 最近、脳の構造やその働きの視点から「心の問題」をみるにつけ、脳のメカニズムというのは、
「これほどまでに、精密なのか」
 と驚かされっぱなしです。

 まさに、コンピュータ以上に精密で、ミクロの差でも、大きく異なった現象として現れます。

 コンピュータでいえば、タグ言語のたった一字が違っていても、機能しないというふうに。
 入力、設定が違うと、まったく違う結果となるように。

・思考の回路。
・感覚の回路。
・感情の回路。
・生命力の回路。

 それぞれに、ミクロの差で精密に働いています。

 自分のために生き生きと生きている人。そうでない人。
 成功する人と、失敗する人。
 問題がすぐに解決する人、もっと複雑にエスカレートさせる人。

 あるとき、そういった人たちに共通するものがある、と気づいたのです。
「なんだあ。そうか、脳の回路ができていないのか」と。

 自分を大事にしていない人、物事がうまく回らない人は、それぞれの回路がうまく働いていなかったり、つながっていなかったり、統合されていなかったりしています。

 回路が圧迫されている人。
 使わなかったために、退縮している人。
 育っていない人。
 人によっては、切断された人。

 どんなに努力しても変わらないのは、脳の回路が正常に機能していないからなんだ、と。

 でも、あきらめることはありません。

 多くの場合、それは、単に稼働していないだけなんです。

「脳の回路が休止状態、休眠状態なら、刺激してやればいい。起こしてやればいいだけじゃないか」

 けっこう症状の重い人も通ってくださいます。

 もちろん、時間はかかります。

 でも、着実に変化していく姿を目の当たりにするとき、
「不可能は、ないんだ」
 と、その人たちに、教えられることがしばしばです。

 回路を育てることは、いくつになっても、できるのです。

 思考にとらわれて、なかなか変わらないと嘆いている人。
 それは、
「単に、脳の回路が眠っているだけなんだ」
 ぐらいの軽い気持ちでいてください。

 あきらめるのはまだ、早すぎます。

 だったら、眠っている脳に、刺激を与えればいい。
 脳の回路を育てればいい。
 そう思うだけでも、脳のどこかが刺激されたのでは? (つづく)