自分を信じる素直さ

「人気稼業(作家)に自分中心心理学を応用できるでしょうか」というご質問がありました。

 もちろん、能力を高めるためには、自分中心は必須です。

 ただ、自分の目標を、どこに設定するか。それによっても違ってくるでしょう。

 私がいつも自分中心レベル度の高い人として、イチローさんや羽生さんを挙げるのは、誰もが、彼らのようになれる可能性があると言いたいからです。

 イチローさんが、2軍時代、コーチの指導に従わなかったというのは、有名な話です。

 例えば、誰かが、
「自分中心なんて、ろくでもないよ。こっちのやり方のほうが、絶対なんだから」
 と言いました。

 こんなとき、私は、
「その人は、どんな生き方をしていますか」
 その人はいま「幸せですか、それとも不幸ですか」。
 そして、こう言います。
「その人の言うことに従っていれば、“その人になる”ことはできますよ」

 だから、自分がその人の生き方を理想とするのなら、その人の生き方を学べばいい。ただ、それだけです。

 イチローさんが、自分の感覚を信じずに、そのコーチの言うことに従っていれば、“そのコーチのような人になっていた”でしょう。

 ただし彼は最初から、コーチのやり方を否定していたわけではありません。まずは、素直にその人のアドバイスを受けています。頑固に相手を否定したわけでなくて、試した後、自分の感覚を信じたのです。

 彼のそんな素直さは、自分を信じているからこそだと思うのです。
 この素直さは重要です。

 素直に人から学ぶ姿勢、気持ちというのは、プラス意識です。
 これは、従うということではありません。

 その素直さの中には、教えてくれる人に対して「尊敬の念」もあります。
 その道を究めようとしている、その人の努力やひたむきさへの尊敬です。

 教えてくれる人に対してライバル意識や戦う意識、否定意識が入れば、それだけで、学ぶことにブレーキがかかります。

 プラス意識で取り組むからこそ、学ぶことにブレーキがかからず、能力が伸びるのです。

 そんな素直さは、自分を信じる「自己信頼」を育てます。

 自己信頼が高いからこそ、素直でいられる。
 教えてくれる人に対して、感謝や尊敬の気持ちを抱ける。
(これは、自分に対する感謝や尊敬と同じです。)

 そんな自分に対する感謝や尊敬(自己信頼)があるからこそ、自分の感覚を信じることができます。

 これはプラスのスパイラルですね。
 自分の感覚を信じていると、ときとして、相手の指導と自分を信じる感覚に違いが生じるときがあります。

 そのとき彼は、自分を信じられるからこそ、自分のほうを優先できるのです。

 こんな自分中心感覚がある人は、なにをやっても伸びていくでしょう。

 自己信頼からの素直さではなくて、依存心からの「従う」になっていると、ついつい、人の言うことを選択してしまいがちです。
 これは特筆したいのですが、依存心から「反発」していても、その依存心ゆえに、反発しながら、人に従うでしょう。

 もちろん、そのコーチを否定するわけではありません。
 あなたが選ぶのは、どちらでもいいのです。
 ただ、その人を選ぶのであれば、その人になる、ということを自覚していればいいのです。

 そして、もし、あなたが相手と違う感覚を感じたときは、相手に従うよりは、自分の感覚を選択しましょう、ということです。
「あの人が言うから。親が言うから。一般常識だから」等々も同じです。

「自分を信じている」人ほど、人の話を素直に聞いて、自分に必要なことは素直に教えを請うことができるし試すことができるでしょう。
 と同時に、自分が違うと感じたら、素直に自分を優先できます。
 そんな人ほど、能力も高くなっていくでしょう。