未来のためのトラブル

 ミスしたり、失敗したりすると、すぐに自分を責めたり、相手を責めたりしがちです。
 たとえば、あなたは、職場で、先輩同僚に新しい仕事を手伝ってほしいと頼まれました。そのとき、
「ちょっと、できるかな」
 と不安がよぎったものの、能力がないと思われるのが嫌で、引き受けました。
 途中で、どうしたらいいか、分からない点が出てきました。

 一人で仕上げるのは無理だと自覚したあなたは、先輩同僚に、分からないところを聞こうと思いました。
 先輩同僚は、手伝ってくれながらも、
「これじゃあ、自分でやってるのと同じじゃないか」
 と言いたげな顔をしています。

 あなたは、先輩同僚の手伝いを得ながらどうにか仕上げたものの、先輩同僚の否定的な表情を思い出しながら、自分の力で最後までできなかった自分を、責めていました。

 善意で仕事を引き受けたものだったのに、逆に、先輩同僚に対して、複雑な思いがします。

 なぜ、あなたは、こんなミスをしてしまったのでしょうか。

 こんなとき、「自分中心」の視点に立つと、もっと違った面が見えてきます。

 まず、こんなミスをした場面でも、「私ができた」プラスの点は必ずあります。
 ここでは、あなたは、途中で、同僚に協力を求めることができました。
 聞かないで、自分でやろうとするよりは、「聞く」という行動ができたのは、評価できる点です。

 さらに自分中心の視点に立つと、ここが、あなたにとっての重要ポイントです。
(「ちょっと、できるかな」と思ったものの、能力がないと思われるのが嫌で、引き受けました。)

 このときあなたは、見栄を張らないで、素直に「全部できるかどうか、自信がない」ことを伝えていたらどうでしょうか。
 それができれば、あなたは前もって、
「分からなくなったら、聞いていいですか」
 などと、先輩同僚に頼んでいたかも知れません。

 あるいは、
「分からなかったら、聞いてくださいね」
 と、先輩同僚のほうから、言っていたかも知れません。

 これができれば、「同じ現象」が起きても、あなたが傷つくことはなかったでしょう。

 さらに言えば、自分中心の視点から見れば、それは、あなたの未来に必要だから起こっています。
 あなたの無意識は、あなた以上に、これからの展開を知っています。
 未来において、あなたが、もっともっと大きな仕事に挑戦していく可能性を知っているのです。

 その未来への準備のために、「自分を守る」ために、そのミスが起こったのです。

 ですからあなたは、自分を責めることはありません。
 未来において、同じようなことが起こったら、このような対応をしようと決めればいいだけです。
 これを学習することで、あなたは、未来において、起こったかも知れない大きなミスを防ぐことができるスキルを身につけたことになるのです。

 実際に、「自分中心」の視点に立つと、どんな場合も、トラブルやミスは、未来の自分の発展のためにあると見えてくるでしょう。