小さな責任のうちに

 こんなことがあった。
 ある会社で、ユーザーから、問い合わせがあった。

 彼は、自分の担当ではなかったので、担当から連絡させるとコメントしておいた。
 担当にも、連絡するように言い置いていた。

 その後、ユーザーから、解決したというメッセージが入った。

 彼はすぐに、担当の者に「問題は解決したから」と伝えた。
 それは、担当が、すでにユーザーになんらかのコメントしていて、責任を感じているのではないかと思ったからだった。少しでも早く、その責任から解放してあげたい、そんな気持ちからだった。

 ところが担当は、そのユーザーに、何の連絡もしていなかった。
 問題は何も起こらなかったので、その担当は、
「じゃあ、私から連絡することはないですね」
 と答えた。

 本当はそれは、彼の問題ではなく、担当の問題である。
 彼は、自分が受けたので、担当の変わりに応対しただけだった。

 それで「じゃあ、連絡しないでいいですね」では、担当は、自分の責任の肩代わりを彼にさせただけで、自分の責任はとっていないことになる。
 問題は何も起こらなかったが、こんなときにこそ、「私の責任」を果たしたほうがいい。 

 自分のパターンは、大きな出来事でも小さな出来事でも、フラクタルに展開している。自分のパターンは、それほど多くない。その担当にとっては、これが、そのひとつである。

 大きなことで起こっているときは、小さなことでも起こっている。
 むしろ、この「小さなこと」を対処しないから、同じパターンの「小さなことが積もり積もって」大きなことになるのである。

 だから担当は、この「小さなこと」で、責任をとったほうが、大きな責任までに発展しない。
 逆に、
「小さなことだから、まあ、責任はとらなくていいか」
 ということで流していると、毎回、「小さな責任」をとらなくなるだろう。

 前記したように、自分のパターンは、フラクタルに展開している。
 「小さな責任」を流していると、それが積もり積もって、「大きな責任」にまで発展してしまうだろう。

 なぜなら、そうやって流しているうちに「小さな責任」に気づかなくなっていく。さらには「中くらいの責任」も気づかなくなり、大きい責任になってやっと気づく、という自分になっていくからだ。
 
 だから「小さな責任」をとっていったほうが、ラクだし、また、それができれば「大きな責任」に発展するのを予防できる。