親も自分を優先する 1
子育てのご相談はPHP出版の定期雑誌にはたびたび執筆させていただいているのですが、なぜか私には、親子関係について書く本のオファーがありません。
小さな子供から、成人した子供との親子関係での相談は少なくありません。
むしろ、親子関係では、本人自身よりも、本人を取り囲む家族のほうが、変わっていく必要があると痛感しています。
子供に何らかの問題があるとしたら、それは、本人だけの問題ではなく、家族全体の問題です。
たとえば、ひきこもりの子供(成人)が努力して、どうにか元気になったとしましょう。けれども相変わらず家族のあり方や関わり方に問題があるとすれば、子供は、また、似たような状況に引き戻されてしまうでしょう。
家族のあり方や関わり方を健全な状態に戻すには、子供自身が、自分の問題をクリアーしながら、同時に家族にもよい影響が与えられるぐらい成長しなければなりません。
苦しんでいる本人が、さらに家族の問題まで背負うのですから、これは、とてつもない大仕事です。
だから、子供だけでなく、本人を囲む家族も同時に変わる必要があるのです。
ですから、子供のために「自分が変わろう」と努力している家族の方々の姿をみると、ほっとします。
ケースによっては、これほど子供を追い詰めておきながら、なお、自分たちのほうに問題があると認めたがらない親も多いからです。
そんな親をもつ子供は、精神的に追い詰められていながら、経済的にも協力を得られないために、回復するどころか、生活そのものが逼迫して破綻せざるを得ない、という人もいます。
ただ、個人的な意見として言えば、深刻な精神的疾患を抱えている状態でなければ、それほど難しいわけではありません。
子供が問題を抱えていると、たいていの親が、子供をなんとかしようと思うために、その家庭は、その子供を中心に回ります。
子供に愛情を注いでこなかったという罪悪感があれば、いっそう子供中心になるでしょう。
そこで親は「愛情を注ぐ」努力をします。
ところが、どんなに愛情を注いでも、子供は変わりません。
実は、親は自分では違ったことをしているつもりでも、パターン的に言えば、同じことをしているからです。
では、このパターンを、どう変えればいいのでしょうか。
原理としては、簡単です。
親が子供を無視すれば、子供は相手を無視することを覚えます。
親が子供に過干渉であれば、子供は相手に過干渉になっていきます。
この原理に倣うならば、親が自分を大事にすれば、子供は自分を大事にします。
つまり、どんなに子供に問題があったとしても、「親が自分を大事にする」ことなしには、子供は「自分を大事にする」方法がわかりません。
親が子供に「自分を大事にする」ことを教えたければ、まず「親が自分を優先する」ことです。(つづく)