それをしているときの実感 2

 まず、焦っているときは、その「何とかしなければならない」という思いを消すために、諦めることです。

 否定的な諦めではありません。

 そもそも“焦る”というのは、それをすぐにすることができないと、無意識にはわかっているのに、顕在意識で「いま、すぐ何とかしなければならない」と思ってしまうからでしょう。

 どんなに急いでも、無意識は「いまは、どんなにあなたが、いま、すぐ、と思っても無理なんだ」と言っているのです。それを伝えたいために、“焦り”という感情でメッセージを送っているのです。

 だから、
「そうか。いまはまだ、無理なんだ。まだ早いんだ」
 と、それを受け入れたほうがいいでしょう。

 悩みの相談を受けているとき、状態が悪い人ほど、
「いま、すぐに変わりたい。いま、すぐに変わりたい」
 と、しがみつきながら急ぎます。

「一刻でも早く、この状態から抜け出したい。楽になりたい」
 精神的に苦しい状態なので、そんな気持ちになるのは、わかります。

 けれどもその悩みは、そのそれぞれの家庭で、10年、20年、数十年と繰り返してきたパターンです。 その適切でないパターンが飽和状態になってしまったために、追い詰められるほどに苦しくなっているのです。
 そんな心と身体に染みこんでしまっている苦しい生き方を、「いま、すぐ、今日にも、明日にも」と急いでも無理な相談です。   

 その「いま、すぐ、今日にも楽になるためには」の答えを、言葉で言うのは簡単です。
 それは、
「いま、すぐ、あなたが、自分を愛することができれば、楽になります」

 けれども、いまのいままで、自分を愛さなかった人が、いま、すぐ、完璧に近いほど自分を愛するなんて、できるでしょうか。

 その苦しみから解放されるには、「苦しいけれども、自分を愛する方法を学ぶ」ことしか、道はありません。

 だから、
「時間をかけて、自分を愛する方法を学んでいこう」
と決める。
 つまり、「諦める」というのは、諦めて「学ぼう」と覚悟する、という意味です。 (つづく)