ガラガラ抽選機

 人生は「自分が信じている通り、実感している通りになる」というのは、疑いもなく確信しています。

 こんなことを言うと、
「自分がいま、〇〇することに恐れを抱いたから、これが実現したらどうしよう」
 などと考えて、自分の恐れていることが、いま、すぐにでも実現するのではないかと恐れる人も出てきます。

 でもこれは、自分の思いがすぐに、即座に形になるというよりは、長期的なスパンでそうなっていくというニュアンスで言っているものです。

 〇〇になることを恐れたからといって、それがすぐに形になるわけではありません。
 いま、〇〇のことを考えていたとしても、次には、テレビを観て大笑いしているかも知れません。一人で音楽を聴いてくつろいでいるかも知れません。

 〇〇になることを恐れたとしても、それを24時間考えつづけている訳ではありません。すぐに他のことに関心を奪われて、自分ではそのことに囚われていたとして
も、実際にそれが24時間、継続しているということはないでしょう。

 それに囚われているとしても、と同時に、
「でも、もしかしたら~。いや、ああかも。しかし、こうかも」
 などと、矛盾することを考えたりもしています。

 また、どんなに考えても、疲れたら眠ります。
「いいえ、私はほとんど毎日、ずっと、そのことばかり考えてしまっているのです」
 と言いたい人でも、眠くなったら眠ります。その間は、それから解放されています。

 いくら「自分が実感したこと」が実現する、といっても、それがすぐに形になるわけではないのです。
 だから、すぐに悪いことが起こると、無闇に恐れることはありません。そんなにすぐに形になるぐらい、自分の意識が整理されたり統一されていないからです。

 とはいえ、その一方で、私は「共時性も自分で創っている」という捉え方をしています。

 これは、単なる思いつきで言っているわけではなくて、20数年間、心理療法に携わりカウンセリングやセミナーを行う中で、徐々に見えてきたことであり、自分なりの体験の裏付けがあってのことです。

 私自身の卑近な例ですが、ずっと前、買い物をしたとき、抽選券を2枚もらいました。
 ガラガラ抽選機で、赤の玉ははずれです。

 私の前に並んでいた女性は、12枚の抽選券をもっていました。
 結局その女性は、すべて外れの赤玉でした。
 そのとき女性が、
「ぜんぜん、当たり玉は入っていないんじゃないの」
 と冗談っぽく言いました。すると店番の女性が、
「そんなことないわよ。たくさん入れてあるわよ。さっきの人も当たったわよ」

 まずその言葉が、私の中にストンと入って落ちました。
 確率的にはその女性が外れたので、「当たる確率が高い」とも思いました。

 こんな抽選券に対する普段の私の思考パターンは「どうせ、当たりっこない」と、期待しないで臨むことが少なくありません。

 けれどもこのときは、先の2点が腑に落ちて、「そうか、だったら当てよう」ということだけに意識を集中できました。つまり、それ意外の矛盾した思考をしなかったのです。
 そんな自分を自覚しつつ、ガラガラを回すと、当たり前のごとくピンク色の当たり玉が出たのでした。

 たいした額ではなかったのですが、当たったことよりも、否定的な思考をしないでいられた自分と、それが形になったことの「関連性」を証明したようで、そのことを仄かに嬉しく感じました。

 もし「引き寄せの法則」ということを信じる人がいるとしたら、こんなミクロの意識が働いて引き寄せるのだということが、体験的にわかってくるに違いありません。