恐れを受け入れる

 “今を生きていない”人は、過去か未来に生きています。
 
 未来を期待や希望で満たしていられれば、幸せな気分になれます。
 幸せだった過去を思い出していても、幸せになります。

 ところが、多くの人が、否定的な過去を思い出し、否定的な未来を予測しがちです。

 未来を否定的な眼でみれば、
「このまま、こうやって生きていると、どうなっていくんだろうか」
「一生、こんな生活で終わってしまうのだろうか」
 などと、未来が見えないことに不安や焦りを覚えるでしょう。

 過去の失敗やミス、悔しかった、傷ついた、腹が立った、悲しかった、そんな出来事に焦点を当てれば、
「あのとき、どうして、あんなことをしてしまったんだろうか」
「あのとき、違った選択をしていれば、もっと楽しい人生になっていたはずだ」
 などと、どれだけでも後悔することができます。

 あなたが今、未来に対してそんな焦りや不安を抱いてしまうのは、どうしてでしょうか。

 頭では、「未来への保証や確約を得ることはない」と、誰でもわかっています。

 けれども心で納得することはできません。

 あるいは今、あなたがそうやって過去を思い出してさまざまなマイナス感情に囚われてしまうのは、どうしてでしょうか。

 「過去は取りもどせないんだ」とわかっていても、頭の中から、過去の記憶を取り去ることはできません。
 過去を取りもどせないからこそ、いっそう無念さが募るでしょう。
 
 あなたがそうやって、未来に不安や焦りを抱いたり、過去を無念に思ったりするのには理由があります。

 その最大の理由は“恐れ”です。

 恐れにはいろいろあります。

 こまかく挙げればきりがないでしょう。

 では、どうして恐れてしまうのでしょうか。

 それは、自分を守る方法を知らないからではないでしょうか。

 「自分の安全を確保する方法」や「愛する方法」を知らなければ、もろもろの恐怖を前にして立ち尽くすしかありません。

 自分を守る方法を知っていれば、不測の事態が起こってもそれに対処できます。

 でもあなたは、その方法を知りません。

 知らなければ、あなたがそうやって過去や未来に囚われて、それを解消できないのは“当たり前”だと言えるでしょう。

 ではここで、
「私は、自分を守る方法や愛する方法を知らなかったんだから、自分を責めたり、相手を責めたり、自分の環境を恨んだりするのは、当たり前なんだ」
 という言葉を自分に投げかけると、どんな気持ちになりますか。

 すこし、身体が緩んだり、心がホッと楽になるのではないでしょうか。
 私たちは、無意識に自分を責めたり、バカにしたり貶めたりしています。
 ですから、こんな言葉で自分を認めてあげるだけでも、心が軽くなります。

 これも、「自分を守る」ための方法の一つです。
 しかも、つい忘れてしまいがちな、非常に大切な方法です。