人の心を見通す力

 人の心を見通す方法や、人の心を読む本といったものがよく売れているようです。私も一冊買って読んでみました。といっても、心が受け付けないので、流し読みです。

 自分中心の思考回路ができあがっているので、自分の心にフィットしない感覚が起こるのです。
(余談ですが、自分の感情を基準にしているので、心にそぐわないものは読みません。参考資料にするなど必要に追われて読むとしても、流し読みになってしまいます。私としては、「読みたくない」ものは、読まない、という決め方でオーケーを出しています。学者バカ脳に等しいと言ってしまえば、それまでですが。)

 人の心を見通したり、人の心がわかれば、どんな得をすることがあるのでしょうか。

 相手の求めているものがわかる。
 相手の好きなものがわかる。
 相手が必要としているものがわかる。

 相手を知れば、好意をもたれたり、より親しくなったりできる?
(この項目は、特に、私には「?」マークがつく。)

 相手のニーズがわかるので、商売の売り上げがあがる。
 ライバルの先手を打って、出し抜くことができる、などなど。

 予想では、そんなメリットがありそうな気がします。

 実際に読んでみると、確かに、キャッチコピーなど、商売に役に立ちそうな感じはしました。

「恋人をつくる方法」「恋人に好かれる方法」といった類の本も、結局は、相手の心を読んだり、見通したりできる能力を磨きながら「いかに相手を知って好かれるか。おしゃれなどでいかに関心をもってもらうか」というふうな「他者中心」的スキルを伝授するものが多数のようです。

 先を予見できれば、競馬のようなギャンブルだったら大もうけするだろうなあ。でもこれは、予知であって、相手の心を読む力ではないし……。
 けれどもそんな観察眼が育っていれば、それを馬場の状態や馬の状態を読むことに生かすことができるかも知れないので、全く無駄ではないでしょう。

「相手の心を見通したり、相手の心を読む」と書いてあるので、一見、これは「他者中心のすすめ」の本のように思ってしまうかも知れません。

 しかし、そんな力を身につけるには、深い洞察力、観察力が必須です。
 これなくして「相手を見通す」ことは不可能です。

 ところが、ところが……、

 実は、そんな能力は「他者中心」では、まず育ちません。

 相手の心を読むことを見通すことができる、という点においては、相手をうかがって相手を知るよりも、「自分中心」のほうがはるかに簡単だし正確です。

「すごいトリックだなあ」と感心しました。

 なぜなら本人はほぼ「自分中心」感覚を身につけている人物です。巻末の写真から、その人の意識が伝わってくるからです。
(写真を見て、その人の意識を情報としてキャッチする。これも一種の「相手を見通す力」だといえるでしょう。)

「自分中心」「他者中心」という意識の違いを知らない人は、タイトルをみれば「他者の心を見抜いてコントロールする方法」という「他者中心」をすすめる本のように思ってしまうでしょう。

 でも自分が相手の言動に乗らずにコントロールするには、まず、自分自身は「自分中心」でなければ絶対と言っていいほど、できないことです。
 彼自身は、自覚しているのか無自覚なのか、意図的なのか、いずれにしてもそんなことにはいっさい触れていません。

 もともと、マジック出身の方のようです。
 他者をコントロールすることを熱心に研究するうちに、気づかずに身についてしまっているのかも知れません。

 それを隠して(?)、他者を操るスキルだけを教える!!
「こんなすごいトリックがあるだろうか」 
 と感心すること、しきりでした。