過去の自分を癒すために最も大事なこと

 過去の傷みが深い人は、どうしても、過去に傷ついたことが、次から次へと思い出される。

 過ぎてしまった過去だから、取りもどせないからこそ、悔しくてならないだろう。

 どれほど自分が傷つけられてきたのか、誰かにわかってもらいたい、という気持ちがこみ上げてくるのもわかる。

 けれども、どんなに自分が傷ついたか。どんなに我慢して生きてきたのかという話を、何度言い募っても、満足することは決してないだろう。

 仮に誰かが、自分の思いを何度も何度も繰り返し受け止めてくれたとしても、心から満足することはない。

 どうしてだろうか。

 それは、誰かがどんなに自分を受け止めてくれたとしても、自分は「無力のまま」だからである。

 どうしてそれが起こったのか。

 それは、自分の立場からすれば、「自分が自分を傷つけ続けた結果」ではあるまいか。

 もちろん相手が「あなたにひどいことをした」。
 良い悪いで言えば、決定的に相手が悪い。
 そうだとしても、そんな悪い相手を前にして、そんな相手に我慢してきたのは誰だろう。

 相手があなたをひどく侮辱したとしたら、そんな相手の前を立ち去らなかったのは誰だろうか。
 相手があなたにひどく迷惑をかけたとしたら、それでもそんな相手の面倒を見続けたのは、誰だろうか。

 確かに相手は、あなたにひどいことをした。
 しかし、そんなひどい相手の前に立ち、相手が自分にひどい扱いをするのを許していたのは、誰だろう。

 自分をそうやって傷つけられるままにして我慢してきたのは、他ならぬ「自分自身」である。

 もしあなたが、過去の出来事で立ち直れないほど深い痛手を負っているといたら、「二度と犠牲にならない」と決断することでしか、自分を救うことはできないだろう。

 誰かがあなたを救ってくれるわけではない。誰かがあなたを救おうとしても、無理なのだ。

 過去の自分から、自分を救うことができるのは、自分自身である。
 過去の自分を癒せるのは、自分自身でしかない。

 自分を救い、自分を癒すには、自分自身が、
「二度と、自分を傷つけない」
 そんな決意をすることだ。

「自分を傷つけないために、自分を優先する」
 そんな努力をし続けることで、ようやく少しずつ、自分の過去が癒えていく。
 もちろん、時間はかかる。

 時間が掛かって当然だ。

 なぜなら、それは、自分を愛する作業なのだから。