相手を感じる 1

 自分中心心理学では、相手の心を読んだり、空気を読んだりするよりも、「相手を感じる」感度のレベルアップを目指しています。

 なぜなら、相手の心を読んだり空気を読もうとして「相手に意識を向けるより、「私が相手を感じた」ほうが、はるかに正確な情報をつかむことができるからです。

 こんなことを書くと、「自分に意識を向ける」以上に、むずかしそうに思ってしまうかもしれません。

 ところが、そうではありません。

「相手を感じる」ことをむずかしいと思ってしまうのは、外側の情報に囚われ過ぎていたり、対人間関係においては、相手の言葉にこだわっていたりするからです。

 ほんとうは、非常に簡単です。

 基準は、「私がどう感じるか」だけです。

 例えば、初対面のとき、たいていの人が、
「この人とは、気が合いそうだ。この人は、なんとなく付き合いにくそうだ」
 などと、言葉では言えないような感覚で相手を感じて判断したりしていないでしょうか。

 どんな相手に対してもまったく何も感じないという人は、まずいないでしょう。どんなに鈍感な人でも、
「こいつは生意気そうだ。こいつは、俺に反抗しそうだ」
 などと、感じたりしているはずです。

 実は、多くの人が、こんな「感じ方」を信じないだけなのです。

 私たちは相手を判断するとき、適切な基準をもって「この人は良い人だ、この人は悪い人だ」と判断しているわけではありません。

 自分にとってこの人は「良い人か、悪い人か」で判断しているのです。

 すでにここで、「自分の感じ方」を基準にしています。

 つまり私たちには、もともと「相手を感じる」感覚を備えているのです。
 けれども普段は大半の人が、こんな感覚を信じるよりも、相手の作られた表情や態度、相手の言葉に注目してしまいます。

 では、どちらが自分にとって、より信頼できるのか。

「自分にとって」ということであれば尚更、相手に対して感じる「感じ方」のほうが、より正確であるし、また、そんな「感じ方」を信頼したほうが、自分を守ったり、大事にすることができるでしょう。(つづく)