自分を感じるほうが正確だ(2)

(2)

 本当に、相手をうまくコントロールすることはできるのでしょうか。

 自分中心流に言うと、相手の心の中の思いは、「私の感じる通り」のままです。
 相手があなたを心の中でどう思っているか。

 そんなことをいろいろ考えたり、情報を集めたり、分析したりする必要はありません。
 それはあなたが「感じる通り」が、相手の心の中の思いだからです。

 だから、あなたは、「自分を感じる」ことができれば、相手のことがわかります。

 もちろんそれは、逆の場合も同様だと言えるでしょう。

 あなたが「相手を利用しよう」と思っていれば、当然相手のほうも「あなたを利用しよう」と思っていると考えているかも知れません。
 少なくとも、あなたがそう考えていれば、そんな思いが相手に伝わるために、あなたに警戒心を抱くことになるでしょう。

 ところが他者中心になって「相手を利用しよう」と考える人は、自分の都合のほうにしか焦点が当たらないために、相手も自分と同じようなことを考えているというようなことに思いが及びません。
 あるいは、自分のほうが「私は信頼できない人間です」ということを発信しているなどとは、夢にも思わないでしょう。

 従業員がお店のお金を盗んで姿を消すという事件が新聞ネタになることがあります。

 店主は、お金を盗んだ従業員を悪し様に言うだけで、自分のことを内省する人はあまりいません。

 では、反対の立場で考えてみましょう。
 従業員としては、いつも怒鳴られたり罵倒されたり、バカにされたり、疑われたりしながら、しかも待遇も悪いとしたら、仕返ししたくもなるでしょう。

 やられたら、どこかで「やり返したい」と望み、そのチャンスを狙います。

 どんなに相手をコントロールしようとしても、コントロールされるほうは、それを望まないし、それに気づいていないわけではありません。

 ただもろもろの利害があって、我慢しているだけなのです。

 それに気付かない店主は、従業員が黙って「はい、はい」と従っていれば相手をうまく遣っているつもりになるでしょう。

 そんな従業員に対して、店主は、お金を盗むかも知れないということには思いが及びません。

 むしろ、従わない人のほうを「お金を盗むかも知れない」と疑いがちです。

 そのために、「はい、はい」と従うような人に、大金を扱うような仕事を任せてしまうでしょう。
 当然、裏切られることになります。

 奇妙なことに映るでしょうが、「相手を支配したりコントロールしようとする」人たちの、典型的な愚かさです。 (おわり)