すべて「自分のため」にする

 自分が気にしているものの、あれこれと迷って、すぐに行動できずにグズグズしてしまうことがあります。

 ある女性が、久しぶりに同窓会に参加したとき、かつて親しかった同級生も来ていて、
「お互いに、また、連絡を取り合って、逢おうね」
 と約束をしました。

 彼女はそう言ったものの、正直なところ、これから新たに付き合をしていきたいという気持ちにはなれませんでした。というのは、同級生と話をしているとき、かなりの年月の間に、彼女は、共通ものがなくなっていると感じたからでした。

 けれども、
「近々、連絡するから」
 と言った手前、約束を守らないのも気が引けます。

 同級生が、連絡を待っていたとしたら悪いなあ、とも思います。

 しばらくの間、迷っていたものの、
「一度ぐらい、逢ってもいいか。また逢ってみれば、気持ちが変わるかもしれないから」
 と自分に言い聞かせて、連絡をとりました。

 何度か連絡がとれず、ようやく相手のほうから掛かってきて、逢う日時を決めました。

 けれども、約束の前の日に、彼女から、「用事ができたので、別の日に変更できないだろうか」といった内容のメールが入っていました。

 内心彼女はほっとしました。

 結局、それっきり「別の日」が決まることはありませんでした。

 こんなふうに、自分が迷っているときは、「相手も迷っている」ことが少なくありません。

 連絡してもしなくても、彼女は、同級生と逢うことはなかったのでした。

 けれども、
「こうなるとわかっていたら、無理に連絡することはなかったなあ」
 と、後悔することもありません。

 自分中心という視点に立つなら、大切なのは、
「私が、約束をしてしまったから、気になる」
 ということです。

 もしかしたら、彼女自身は逢いたくないと思っていても、同級生は逢いたがっていたかもしれません。

 ですから、同級生に逢えるかどうかは別にして、
「私がこのまま、連絡しないのは、気が引ける。だから、自分の気持ちをスッキリさせるために、連絡しよう」

 こんな捉え方ができれば、「自分のためにする」ことに、何も無駄はないのです。