「いま、すぐ」をあきらめる 1

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 長いこと苦しんでいると、
「いま、苦しいから、すぐにラクになりたい」
「いま、すぐに、こんなつらい悩みから解放されたい」
 と思ってしまうのは、無理ありません。

 けれども、こんなふうに考えてしまう人ほど「思考の牢獄」の中に閉じ込められています。

「いま、すぐ」という気持ちになっているときは、
「まだ、変わらない、まだ、楽にならない。いつまで経ってもラクにならない」
 などと考えているでしょう。

 ひとつは、そんな思考そのものが、自分を苦しくさせています。

 単純に、「まだ変わらない」という言葉を頭の中で繰り返していけば、その言葉が否定的な感情を引き起こします。

 さらにまた、その「否定的な感情」のまま次の言葉を呟けば、自動的に否定的な思考をします。その否定的な思考がまた、否定的な感情を引き起こします。

 否定的な感情に溺れながら思考すれば、
「どんなにやっても、変わらない」
「何をやっても、ラクにならない」
「いつになったら、この苦しみから、解放されるんだろうか」
「もう、一生こんなふうに苦しまなければならないんだろうか」
 などという思考が生まれてくるのは、当たり前でしょう。

 しかも、そうやって思考と感情の海の中でもがきながら、
「いま、すぐにこんな苦しみから解放されたい」
 と望んでいるときは、
「誰かが、こんな苦しみから私を救って欲しい。こんな牢獄から救い出してほしい」
 というように、誰かにすがりたくなっているでしょう。

 客観的に、自分のそんな姿をみることができれば、「いま、すぐにラクになりたい」ということが、いかに無茶な要求であることが理解できるのではないでしょうか。 (つづく)