以前は仲がよかった

 争いが耐えない夫婦。心が通じ合わない夫婦。そんな方々から相談を受けたとき、よく聞くのは、
「結婚前は、仲がよかった」
 という言葉です。

 では、その「仲のよさ」というのは、どういう状態の仲のよさなのか、少し考えてみましょう。

 例えば、一方が支配的で、他方が被支配的であれば、この組み合わせのカップルは「仲がよい」と思うかもしれません。
 一方が、あるいは両方が我慢していて、本当の自分の姿や言いたいことを我慢していれば、ほどほどに「仲がよい」と思うかもしれません。

「好き」という感情が優って、「好かれる」ために最大の努力をしている状態なのかもしれません。

 物理的条件では、結婚前の恋人同士であれば、たまに会うから、少しの間なら、自分の我を隠して我慢することができます。

 あるいは、学生同士だと、少し(笑)の勉強と好きな相手のことを考えているだけでも生活が成立します。
 一般家庭が行っている、洗濯したり、料理をしたり、掃除したり、育児をしたり、生活費を稼いだりということから解放されているために、仲よくできるでしょう。

 私自身が考える「仲よくしていく」ために最も重要な条件は、「話し合える相手かどうか」という、この一点です。

 話を聞くと、仲のいいときもあるけれども、意見が違うと、
「恋人とけんかになることもありました」
 というふうに、問題が起こると争って主張したり、けんかになるとしたら、結婚したら、もっと争ってしまう問題が増えるでしょう。

 我慢し合っているカップルほど、自分を主張すれば争いが増えるし、それに疲れ果ててしまえば、
「もう、話をするのもいや。そばにいるものいや」
 と言う状態になってしまうでしょう。

 それぞれが勝ち負けを争う気持ちで主張するのではなく、話し合うことを、楽しいと感じ合えていたり、その時間に充実感を覚えられるかどうか。

 そんな「話し合える」時間こそを、幸福感や満足感を感じる合える相手であれば、結婚しても、心から「仲よくしていられる」のではないでしょうか。

 これはもちろん、夫婦だけでなく、親子でも、職場でもそうです。