ずっと以前から、あなたはそこにいてくれた

 家から駅に向かうとき、ある女性が、その道すがらふと顔をあげると、その風景が、生まれて初めて見たように思えたという話をしてくれました。

 何度も、何年も行き来していたのに、気がつかなかった。
「でも、ずっと以前から、その自然はそこにあったのに」
 独り言のように、ぽつりとそういう彼女の言葉に、私も感動してしまいました。

 山や川、海、森、花、空、雲。さまざまな自然を人に例えるなら、こんな感じでしょうか。

『私はずっと愛を求めていた。どんなに探しても見つからないと思っていた。失望して、悲嘆に暮れたときもあった。いつしか私は、愛なんて信じないと頑なに思ってしまっていた……。

 何て私は愚かなんだろう。
 いま気がついた。

 あなたは、そんな私を黙って見守っていてくれた。
 最初から今日まで……。そしてこれからも。
 そう。ずっと以前から、愛は、そこに在ったのだと。』

 自然の恵みに対しても、人の愛に対しても、こんな感じで「私が愛を感じる」ことができれば、素敵ですね。

 彼女は言いました。
「それに気づいたとき、その景色が、とても愛おしく、また懐かしく感じました」と。

 もちろんそれに気づいたのは、「私の心が変化したから」です。

 私が私を愛することができた。

「愛を感じる私」の目でみたとき、いつもの風景が、まるで初めて目にするように輝いてみえた。
 それは、私が愛を感じることができた、その瞬間だと言えるのです。