無意識にやっていること

無意識にやっていること

 相手の態度や表情や顔の変化は、目でみることができます。
 けれども、もちろん自分の顔を見ることはできません。

 自分のほうに意識が向いていない限り、自分が何をやっているかに気づくことはできません。
 けれども、自分が自分のことに気づいていようがそうでなかろうが、相手もまた、自分の態度や表情に反応しています。

 電車に乗っているとき、楽しみの1つは、車内販売です。コーヒーやお茶だけでなく、車内でお弁当を食べるのが好きな私は、構内でお弁当を買い忘れたとき、車内販売のお弁当を買うことがあります。

 この前の出張のときにも、座っているシートの後方から、車内販売の若い女性がやってきました。

 声を掛けようとしましたが、販売の女性は、まるで客のことなんて眼中にないという素速さでカートを押して、通り過ぎようとしました。
 呼び止めようにも、彼女に気づいたときには、すでに背中が見えていました。

 彼女が足早に私の前の列の席を通り過ぎようとしたとき、前の席に座っていた女性が、
「済みませんっ」
 と、手を挙げて呼び止めました。
 その声に、販売の女性は、ハタと足を止めました。その瞬間、背中を向けたままの彼女の周辺の空気が一瞬、凍てついたように感じました。

 そして、くるりと振り向いた彼女の顔が私の目に飛び込んできたとき、私はギョッとしてしまいました。

 彼女の表情を目撃した人は、一様に驚いたに違いありません。
 
 その顔は、
「なんで、私に声を掛けるのよッ!」
 と言わんばかりの、まるで夜叉のような形相をしていたからでした。

 その直後、彼女は我に返ったように、普通の表情に戻っていました。

 そのとき私は理解しました。
 どうして彼女は、足早に通り過ぎようとしていたのか。
 どうして、すごい形相を返してきたのか。

 販売を開始するとき、最前列の車両か最後列の車両から販売していくのではないでしょうか。

 彼女が足早に通り過ぎたのは、最前列の車両に向かっていたのです。
 つまり彼女はまだ、販売態勢に入っていなかったのです。

 だから、呼び止められたとき、スの顔で振り向いた、ということだったのです。

 事実彼女は、その客に品物を売って姿を消すと、しばらくしてから、ゆっくりと、今度は客に売るために、
「〜は、いかがでしょうか」
 と、ゆっくりと客席を見回しながらやってきたのでした。

 こんなふうに、自分の顔が見えないと、自分がどんな態度や表情をしているか気づきません。

 気づかなくても、自分の思いは、そのまま態度や表情、雰囲気となって相手や周囲に伝わります。

 それでも、自分の顔は見えません。

 だからこそ、「いま、どんな気持ちがいるか」に気づくことが大事なのです。

 自分がマイナス気分でいるときは、マイナスの表情をしています。
 相手を心の中で責めているときは、相手を責めているとわかる表情や態度をしています。

 態度や表情は、自分の心を映す鏡です。
 その鏡を、自分が見ることはできません。

 だからこそ、自分が「いま、どんな気持ちでいるのか。どんな思いを抱いているのか」に気づくことが大事なのです。

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