こっちの水よりもあっちのお水のほうが(2)

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 前回、目の前にいる人を大事にしないという話をしていて、ふと、悩みを相談されて、つい何度もするうちに、親しくなったというケースを思い出しました。これも定番の1つでしょうか。

 もしかしたらこれも、「目の人を大事にできない関係かも知れない」と思ったからでした。

 友達だと思っている人たちの会話で少なくないのは、相手と一緒にいるとき、第三者の話題や、噂話や愚痴で盛り上がるというものです。

 もちろん、共通の話題で盛り上がる一体感があるので、それなりに楽しいでしょう。

 けれども、これは、相手を親しい人と認識して、相手に関心を抱いているというわけではありません。

 お互いにそれほど親しい関係でない場合は、とても無難な会話です。

 むしろ、自分のほうはさほど親しいと思っていないのに、相手のほうが一方的に親しみを覚えて、自分にしてみれば“一線を踏み越える”ようなプライベートな内容に踏み込まれてしまって、不快感を覚えるということもあるので、一般的な会話としては、そんな話題のほうが傷つけ合わずに話せて害がないかもしれません。

 ただ、あんまり度が過ぎると、人のことは話せるけれども、自分のことやお互いのことは話せないということにもなりかねません。

「相談する。される」という関係もそうです。

 相手が相談をしているときは、とても親密なように感じます。
 相談というそのものの性質が、特別な関係のように感じさせるものだからです。

 けれども、いざ付き合ってみると、いよいよ、二人が向き合うことになります。

 そんなとき、相談されていた人は、相談していた人が自分に関心を向けてくれない、という悩みが生じるかも知れません。

 相手と話をするとき、そんな会話になってしまいがちな人は、“相談”を仲介役しないで、「私とあなた」が向き合う関係に、育てていきたいですね。