自己イメージ

 YouTubeで、ホームレス生活をしている人が、見違えるような紳士姿に変貌していくという動画を観た。

 まずスタッフが、ホームレス生活の人に声を掛ける。
 観ていると、話しかけても拒否されるような気がしてしまうので、応えてくれるとホッとする。

 交渉が成立して、スタッフが整髪店に案内する。

 警戒しながら恐る恐る椅子に座る彼。
 ひげを剃る。
 髪を整える。

 この辺りまでは、まだ、周囲を恐れてされるがままになっているような彼の心が伝わってくる。

 次第に、諦めていた表情に、精気がもどる。

 途中で、シャワーは浴びないのだろうかと気になる。もしかしたら、省略されているのかもしれない。

 服を選ぶ段階になると、警戒心が解けて気持ちが緩んだような感じが画面から伝わってくる。

 そして、その人のイメージにあった服装で登場するときは、まるで別人になっている。

 別人というのは、姿恰好が別人というよりは、その人本来の姿がもどってきて、ホームレス生活のときには感じられなかった、人間としてのあるべき姿。その存在感。

 最も新鮮なのは、彼が、鏡で自分の全身の姿を眺めるとき。

 彼は、自分と遭遇する。

 それは、彼が忘れていた自分だった。
 かつての自分はそうだったのだと、改めて思い、“感じる”。

 かつての自分が蘇り、過去の自分と今が、「一致する」。

 人間としての誇りを取りもどした瞬間。

 これをきっかけに、ホームレス生活に終わりを告げて、仕事をしはじめた人もいるという。

 服装が、彼の自己イメージを変えた。

 鏡の前に立っている自分を“実感する”。
 その実感が、自分をとりもどす。

 目の前に立つ鏡の中の自分。そのときに感じる、その確かな実感が自分の心をチェンジさせた、そう思った。