無意識の力を味方につける

 以下の文章は、
「コレだけで、あなたの生き方は一瞬にして変わる」(大和書房)の中に、盛り込めなかった原稿です。

 脳の構造もその仕組みも、まさに「自分中心」です。
「本物は、すべてに共通する。自分中心も、そうだ」
 と腑に落ちた箇所です。

 薬学博士で東京大学教授である池谷裕二さんは「comzine」のインタビューで、
『大脳生理学者は、θ波とγ波を重要視しています。この二つの波は、ほぼセットになって出てきます。θ波とγ波が脳波として出ている状態というのは「脳が柔らかい状態」と言え、θ波とγ波がほぼ同時に出ている時、脳には外からの情報が大量にインプットされていて、神経細胞が盛んに活動している時に活発に見られます。』
 というふうに語っていらっしゃいます。

 また糸井重里さんとの対談集「海馬」(新潮文庫)という本の中では、
『神経を一個一個ばらばらにしてしまうと、ネズミも人間にも差がない。神経細胞なら、昆虫でもほぼ一緒ですから、神経を一個、一個、いくら研究しても、人間はわからない。違うのは関係性です。神経細胞と神経細胞がおりなす社会が違う。過疎村と大都会のように、ネットワークのパターンとその数が違う。脳の本質は、物と物とを結びつけること。結びつけて新しい情報をつくっていくことなのだ。』
 といった話が載っています。

 とりわけ、神経細胞の一個一個は人間も動物も一緒。違うのは、「関係性」だということも、面白い点です。

 私自身もさまざまな著書で「自分中心」の概念を語るとき、人間社会においては、それぞれが相手との関係性や、関係する人とのバランスで成り立っているということを述べています。神経細胞の世界でも、この点で共通しているということに興味を覚えました。

 神経細胞のネットワークは、使えば使うほど、無数の結びつき方をして密になっていくという点も納得できます。人間社会を「関係性」という観点で捉え、自分中心になってリラックスを実感すればするほど、これまで述べてきたように、脳の容量も心の容量も拡大されて、膨大な情報をインプットできます。

 さらに、インプットされた情報と情報が手をつなぎ、どんどん立体的に結びついていけば、情報が情報を創り出し、まさに「創造し」、そのネットワークは、より密にかつ拡大していくのです。

 一言で言うと、単にリラックスするだけで、計り知れない恩恵に浴することができるのです。
(余談ですが、いまこんなふうに興味を抱いているこの瞬間、私の脳では、アルファ波やθ波やγ波が発生していて、脳が統合的に働いているのでしょうね。)

 ただ、単にリラックスすればいい、というだけでは足りません。
 ここが自分中心のポイントです。

 詳細は本を読んでいただくとして、従来言われていることであっても、ほんのちょっと視点を変えるだけで、これまでたいした効力を発揮することがなかった方法が、その効果を最大限に引き出すことになる、ということの証左だと言えるでしょう。

 これだけで、人生が確実に、プラスの方向へと流れはじめます。
 私たちがもっている本来の能力を効果的に発揮できるだけでなく、無限の可能性を秘めている「無意識の力」を味方につけることができるのです。