「逃げたくなったときに読む本」 2

「逃げたくなったときに読む本」(祥伝社)という本が文庫本として発刊されています。
「逃げたくなったら」というタイトルですが、ほんとうは、「逃げる」という言葉は「安全に避難する。自分を守る」という言葉に置き換えたほうが、より適切でしょう。

 自分を傷つけないためには、
「相手が感情的になったり、強引になってきたり、ムキになってきたりしてきたぞ」
 というときよりも、そんな雰囲気を感知したときには、早々に「逃げる(自分を守る)」ことを考え始めたほうがいいでしょう。

 前回、こんな話をしました。

 自分の身に危険を感じたら、逃げたり避難するのは当たり前です。
 怖くても、そこに踏ん張らなければならない、というのは「戦う」ということです。

 自分の恐怖を克服するには、
「その恐怖と、戦わなければならない」
 と、信じている人たちが多いのではないでしょうか。

 けれども、それはどうでしょうか。

 脳の構造で考えると、自律神経には「戦うか、逃げるか」の反応を引き起こす機能があります。
 戦っていて逃げ出そうとするのは、恐怖を覚えたときです。

 動物さながらに、恐怖を覚えれば誰でも逃げ出します。
 それを、理性で止めようとしても、無理です。

 恐怖を克服するために「踏ん張ろう」としても、恐怖が勝れば、そこから逃げ出そうとするのは、脳の機能の働きとしては当然のことなのです。

 では、そんな恐怖を覚えながらも、そこに「踏みとどまらせるの」。それは、何の力なのでしょうか。
 そんな強さは、どこから生まれるのでしょうか。

 恐怖よりも勝るもの……。

 それは、「愛」です。

 動物の親でも、自分の子供が危険な目に遭えば、身を挺してでも、子供の命を守ろうとします。

 戦って踏ん張っても、恐怖を乗り越えることはできません。怖いと感じたら、体が反応して、逃げだそうとします。
 あるいは、その恐怖で、フリーズするかもしれません。
 戦って、恐怖を乗り越えることはできません。
 逆に、戦えば戦うほど、恐怖は心に刻まれて増幅していきます。

 恐怖に打ち克つことができるのは、「愛」だけなのです。  (おわり)