過去は関係ない? 

 セレブとして多くの女性たちから憧れの対象とされている女性が、「過去はとりもどすことができないので、関係ない」と言っていたといいます。
 すでに亡くなっていますが、自己啓発の象徴のような方も「過去は関係ない」と,本にお書きになっています。

「過去は関係ない」

 これをどういうふうに捉えるか。その意味は、どのようにも解釈できる言葉です。

 その意味は、言う人の意識によって異なるし、受け止めるほうも、受け手の意識によってことなります。

 例えばある人は、過去にとてもつらいこと苦しいことがあって、あるいは屈辱的なことがあって、過去から目を背けていたいので、過去の自分と今の自分を切り離すような気持ちで、
「過ぎたことだから、過去を振り返る必要はない。それよりも、未来のほうに目を向けて、これからどう生きるかというように、前向きに考えたほうがいい」
 と言っているのかも知れません。

 あるいは、過去にいろいろなことがあっても、そんな過去の出来事を癒すために過去を振り返りつつ自分を見つめ、自分なりに努力して精神的にも成長してきたし、過去の自分の傷みも随分と癒されてきたし、心も着実に軽くなってきているので、未来を見ながら「過去は関係ない」と言っているのかもしれません。

 一般的にはどちらのほうが多いのでしょうか。

 臭いものには蓋ということもできないわけではありませんが、自分に限っては、そうやって蓋をしたとしても臭ってくるでしょう。

 どんなに目を背けていても、自分の過去を無視することはできません。それを避けていても、過去と向き合う時期がいつか訪れるでしょう。

 とは言っても、もちろん「向き合う」というのは、自分の悪いところ、相手の悪いところをほじくり返しては、自分や相手を責めたり攻撃するということではありません。

 自分中心では、自分にとって「今まさに、つらいことが起こっている。あるいは過去に起こった」としたら、それは、自分が自分を大事にしていない、大事にしなかったからだ、というふうに捉えます。

 自分の言動パターンで言うと、過去も今も未来も同じです。同じ言動パターンを土台にして動いています。
 過去がそうであれば、今もそうだし、未来もそうです。

 それに気づき、改善するための過去です。
 自分を愛するための、情報としての過去なのです。

 ですからそこに気づかない限り、同じことを繰り返しながら、傷ついたり傷つけたりしながら、虚無的、刹那的に、
「前向きに生きようよ。過去は関係ないよ」
 と言いつづけることになるでしょう。

 こういう意味での「過去はとりもどせないので、未来を見よう」というこということであれば、今以上に望ましい未来を手に入れることができるでしょう。

 少なくとも、変えられるのは自分自身ですし、自分自身の今を変えることで、未来を変えることができるからです。