誰も邪魔する者はいない   

自分が意志をもっているのかどうか、わかりません、
と言われることがあります。

「私は、意志が弱いんです」という人もいます。

まず、あまり深刻に、意志の強さについて悩むことはありません。

そうやって悩むのは、もしかしたら「自分の意志と通す」には、
他者と戦って打ち勝つぐらいの「強い力」がなければならない
と思っているからではないでしょうか。

私自身は、意志をもつために「そんな力がいる」とは思っていません。

むしろ、そんな力は「我の強さ」だと解釈しています。
あるいは、「戦う意識が強い」と言い換えてもいいでしょう。

ある男性が、職場で、
「私は、自分中心でいたいから、何があっても、
私の思ったことをしています」
と言いました。

しかしそう言いながら、とても険しい表情をしています。
実際に、そうであろうとするために、同僚たちと対立したり、
心理的トラブルが起こるのだそうです。

彼は、
「自分中心って、自分の気持ちや欲求を、
叶えてあげるってことでしょう。だから、
自分の気持ちを叶えてあげているんです。しかし、
全然状況がよくなりません」
とも言います。

当たり前だと思いました。

彼の態度の頑なさに、
「もしかしたら、自分の欲求や願いを叶えるときに、
他者に邪魔されると思っていませんか」
と尋ねたくなりました。

彼は「あ、そうだったのか」と気づいたようでした。

彼は、邪魔者を蹴散らして自分の思いを貫くことが、
「意志が強い」と勘違いしていたのです。

「自分が意志をもつこと」を、誰も邪魔することはできません。

邪魔されると思っているのは、
自分が、自分にそれを認めていないからです。

仮に誰かが、「それは間違っているよ」と反対したとしても、
相手の捉え方を強引に変えさせる必要はありません。

多くの人が、自分の思いを優先するとき、「他者が邪魔する」
と思い込んでいます。

そのために、最初から、「邪魔されないように、
人を押しのけなければならない」という態度をとります。

邪魔されるという意識は、決して、自分中心ではありません。
戦っています。
戦いながら、自分の思った通りにやるという意識です。

自分が、自分のために、やるのであれば、戦う必要がありません。
「私は、こうします」
そう決めて、行動すればいいだけです。

思い切って行動してみると、相手からは何の反発もなく、
「邪魔されると思っていたのは、自分の勝手な思い込みでした」
と答える人も少なくないのです。