濁流と清流  (Mさんからの投稿)

さて、今日は、
こんなお話です。

よろしくお願いいたします。

僕は、清流の住人。

この世界がとても、
気に入っているんだ。

流れも穏やかで、
とても、水が澄んでいて、
綺麗で、気持ちがいいのです。

ある時、あちら側にある、
濁流の住人が
僕の所へやってきました。

「いいなあ。俺もそっちで、
暮らしたいよ」

いつも、濁った川で、
流れに巻き込まれながら、
もがき苦しんで、
過ごしている人でしたから、
それなら、少しでも、
清流の良さを
知ってもらえればいいなと思い、
一生懸命、お手伝いしました。

彼もまんざらでもなさそうでした。

彼もこちら側に来て、
時間が経ったある日のこと、
清流がよくて、もう、
帰るのをやめると
言うのかと思い、
耳を傾けようとしたら、
なにやら、不穏な空気が
漂ってきました。

「おい、お前もこっちの川に来て、
暮らせよ。この川って、
勢いが強くて、刺激的だぜ。
一緒に流れにもまれながら、
暮らそうぜ」

彼は、そう言うと、
僕を濁流へ引きずり込もうとしました。

僕は、驚いて、手を振り払い、
「ごめんなさい。行くつもりは、
ありません」と断りを入れました。

「ああ、清流の気持ちよさを
知ってもらおうとしたのは、
彼にとっては、お節介だったのかなあ」

僕は、もう、彼を清流に
誘うのをやめることにしました。

本人がそこがいいというのなら、
それは、本人が選択した結果なので、
自分がわざわざ、濁流の流れの中に
入っていって、もまれながら、
自分の清流の話が大事なのだということを
伝えなくてもいいのだということに
気がつきました。

僕は、今日も清流の気持ちよさを
味わっています。

澄んだ水がとても、綺麗で、
波風立たず、穏やかです。

つくづく人は、自分に馴染んだ環境を
選んでいるのだなあと思いました。