優位に立ちたい人の乗り越えがたい傷み

「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ(学研プラス)
というタイトルの本を、過去に出している。

優位に立ちたい人が職場にいると、
「いきなり怒り出すので、どう対応していいかわからない」
「いつもピリピリしているのがわかるので、側にいるだけで、
神経が張り詰めて息苦しくなってしまう」
という声を異口同音に聞きます。

優位に立ちたい人たちは、人のことを気にしているようで、
気にしていません。

本人たちは、自覚の上では、
「非常に、人のことを気遣っている」と言います。

「言いたいことを言えない」
とも言います。

もちろん、他者には、そんなふうには見えません。

相手の気遣っているというのは、実際には、
相手に対して不信感を抱いているときで、
「こいつは、俺の話を聞く気がないな」
「この人は、私のことを否定しているに違いない」
というような、優位に立ちたい人たち特有の警戒心や猜疑心が
働いている
きでしょう。

ひとたび気にすると、相手の一挙手一投足に
目を光らせるようになっていきます。

そして、ほんの僅かでも、自分を否定した素振りが見えるやいなや、
急に不機嫌になったり、怒り出したりする、ということなのです。

その中には、もちろん勘違いも少なくありません。
相手に対する不信感から、相手の行為に悪意があるかのように
映ることもあるでしょう。 

けれども仮にそうであっても、優位に立ちたい人は信じません。

優位に立ちたい人たちの中には、自分の意識の根本に、
そんな不信感や猜疑心があると自覚できない人もいるのです。

それと気づかずに、自分が望む通りの応えが返ってこないと、
「許せない」と思うぐらい激しいネガティブな感情を、
心の奥に燃えたぎらせている人もいます。

ただ、そんな彼らもまた、かつては、
いま迷惑を掛けられている人たちのように、
誰かに「ひたすら恐れながら従っていた」過去があったはずです。

いま優位に立っている彼らが、他者から蛇蝎のごとく
倦厭されているとしたら、それは彼らが過去においては、
彼ら自身が、過去に、「同じことをされていた」、
ということの証左でもあるのです。

仮に今、自分が優位な立場にいたとしても、
彼らの心は未だ、傷つけられた者の心のままになっています。

その傷みは、どんなに優位に立とうと、解消されることはありません。

そもそも、優位に立てば解消できる代物ではないからです。

優位に立っても過去の自分を癒やせない、これが、
乗り越えがたい痛みとなっています。

そんな彼らの心を知れば、彼らに対する印象が、
一変するかもしれません。

何よりもまず、過去のそんな経験をしている人ほど、
自分自身がそれに気づいて、
より、自分を大事にすることを第一にしたいものです。

その時々の、小さな選択のとき、自分の気持ちや感情や欲求を
満たす選択をする、ということです。