「逃げたくなったときに読む本」 1

「逃げたくなったときに読む本」(祥伝社)という本が文庫本として刊行されています。
「逃げたくなったら」というタイトルですが、ほんとうは、「逃げる」という言葉は「安全に避難する。自分を守る」という言葉に置き換えたほうが、より適切でしょう。

 不快になりそうだったら、その場所を離れることを考えはじめる。
 イヤなときには、ひとまず退去する。
 不快なところに、いつまでも自分を晒さないで、その場を離れて自分を守る。

 自分を傷つけないためには、
「相手が感情的になったり、強引になってきたり、ムキになってきたりしてきたぞ」
 というときよりも、そんな雰囲気を感知したときには、早々に「逃げる(自分を守る)」ことを考え始めたほうがいいでしょう。

 それも、自分中心的捉え方をするならば、
「相手が、感情的になりそうだ。怒り出しそうだ」
 ではなくて、例えばいま相手と話をしていて、
「このまま会話を続けていれば、自分自身が、相手の態度や表情や言い方に対して、感情的な反応をしてしまいそうだ」
 というふうに、自分自身がマイナスの感情になってしまいそうなときには「逃げる(自分を守る)」ことを考え始める、ということです。

 このとき、「人と競ったり、戦ったりする」人ほど、逃げることができないでしょう。
 なぜなら、本でも書いているように、戦っている人たちにとっては、
「逃げる」というのは、負けることを意味するからです。

 他者をみると、どうしても、「戦いモード」になっていきがちです。
 けれども、自分の気持ちや感情の「感じ方をみる」と違ってきます。

 自分の感情を感じることができるなら、相手と戦いモードになっているときは、「心も体も負担を感じている」ことに気づきます。

 いま通信講座で、「自分の感じ方」のレッスンをしています。
 レッスンをしている人たちはすでに気づいていると思うのですが、相手と感情的になるかもしれないということを感知して、身構えて話をしている状態が、どれほど“きつい”ことなのか。

 戦って相手を打ち負かすよりも、「身構えるモード」になって“きつい”と感じたら、危険を避けるために撤退したほうが、はるかに自分を傷つけないで自分を守ることができると知るでしょう。

 先ずは初歩のレッスンとして、これまで「逃げる」という言葉を用いていたとしたら、「危険を避けるために。自分を傷つけないために。自分を守るために退去する」という発想に切り替えることをしてみましょう。

 これだけでも、「逃げたら、負け」という思い込みの鎖が、少し緩むはずです。    (つづく)