他者中心の人は相手を感じていない  

こんな質問のメールをいただきました。

お聞きしたい事があります。
私の親は、生きる事での楽しい部分は
あまり教えてくれないような二人です。

思えば学校に行かなければ働き口はない、
といったような脅しの暗示のようなものを、
進学や就職のときに言われてきました。

今、私は40です。
今朝も「更年期は40前半からある人もいる」などと、
母からすればただの情報かもしれませんが、
私にとっては深刻な問題なのです。
すぐに「もうその話はやめて」と伝えました。

先生に、私が結婚をしない(できない)のは、
今の家族関係からだと教えて頂きました。

自分の気持ちを伝えずにマイナスな関係で繋がってきたため、
それしか知らないからだと、そして事態を好転させるには、
言いにくいことも私がそうしたい、
と伝えるといいと教えて頂きました。

自分のできる範囲で伝えていますが、
自分の中で伝えられているのは2割くらいかな、という感じです。

私はこれからの人生、やはり一人は嫌です。

パートナーがほしいです。一人でできる感じるレッスンは続けています。
家族へ、自分の気持ちを伝え続けることもしていこうとは思います。
でも正直、家族への働きかけの方がしんどいです。

自分を感じるレッスンだけではパートナーと巡りあえるチャンスの見込みは低いでしょうか。

(返信)

頂いたメールには、それぞれの文章の内容について、
もっと詳しくお話したい点もありますが、
今回は、
コミュニケーションということをメインに書かせていただきます。

もちろん、このようなメルマガで、
解決方法をお伝えすることには限界がありますので、
その点は、ご了承ください。

いつも言っていますが、自分表現、
コミュニケーション能力というのは、
実際の経験を経て身につくものです。

瞑想やヨガや読経といったもので身につくものではありません。

今号のメルマガのもう一つの記事にも書いていますが、
コミュニケーション能力を高めるには、
「相手を感じる。私を感じる」ことが不可欠です。

例えば、相手が風邪を引いて熱があるときに、あなたが、
「ねえ、近所の人と不快なことがあったんだ。聞いてよ」
と言ってせがんだとしたら、
「へえ、そうなんだ。どんなことがあったか、話してみてよ」
と軽快に答えるよりも、
「うるさいなあ。頭が痛いんだから、静かにしてよ」
と言いたくなるでしょう。

これが「相手を感じていない」ということなのです。

このとき、相手の状態を態度や表情で
「私が感じとる」ことができれば、
自分の話したいことを優先しようとするよりも、
「どうしたの? 気分悪そうだけど」
と、尋ねることができるでしょう。

他者中心の人たちは、自分の意識が常に他者に当たっています。
他者に当たっているので、
相手のことを感じることに長けているように思うかもしれませんが、
そうではありません。

他者中心の人たちは、相手を感じるよりも、「頭で思考」します。

相手の顔色を窺って、
「相手が自分のことを、どう思っているか」
「相手が自分を傷つけるのではないか」
などと、相手の態度や表情を「感じとる」よりも速く思考して、
思考で相手の心の中を探ろうとします。

すでにこのときは、「自分が傷つくかどうか」
のほうに関心が向いていて、相手を感じている暇もありません。

自分が傷つかないために、相手のことを「見る(窺う)」のです。

自分が「傷つくかどうか」のほうが気になるのは、
他者の誠意や善意を、自分が信じていないからだと言えるでしょう。

自分が主張すると、否定される。反論される。傷つけられる。
決して、「そうだ」と同意してくれることはない。
「悪かった」と誤ってくれることもない。

こんな環境で育っていれば、
自分が「傷つけられるのではないか」と、
常に相手を警戒するしかなくなっていきます。

むろん、そんな環境の中で育っていれば、
「適切なコミュニケーション」や
「共感的なコミュニケーション」を学ぶことができません。

相手を感じ、自分の心を感じとることができなければ、
心が通い合うコミュニケーションができるはずもありません。

「感じること」は、自分中心の基本です。

また、それを育てながら、「自分表現」のレッスンも必要です。

「感じる」ことと「言葉で表現し合う」こととは、別の能力です。

「感じる」能力を育てながら、同時に、
「言葉で表現し合う」能力を育てることが必須です。

例えば、メールにあるような、
「もうその話はやめて」
という言い方は、依頼するというよりは、
相手に「指示・命令している」ように聞こえます。
言い方によっては、「攻撃」とも言えます。

これは、こんな言い方もできます。

「お母さんが心配になるのはわかるけど、私も悩んでるの。

だから、その話に触れられると、つらいんだ」
そう言い置いて、その場を離れることもできるでしょう。
(このとき、わかってもらおうとする思いが強いと、
それ故に、途中で話をやめることができません。)

こんなスキルが身について、
人に傷つけられる恐れが減っていけば、
パートナーと出会うチャンスも生まれてくるのではないでしょうか。