それが善意であっても、押しつけることはできない

自分が他者に善意を抱いているとしても、あるいは、
心から誠意をもって相手に接しているとしても、
それを、相手に押しつけることはできません。

自分が善意であっても、それを相手が善意と受け止めるか、
悪意と受け止めるかは、相手の自由です。

「私が親しくしようとしているのだから、
あなたも私を好きになりなさい」
と強制することはできません。

自分が善意でやっているつもりでいると、つい、
自分の善意を「相手にも押し売りしたくなる」ものです。

この善意の中には、
「あなたを好きではないけれども、仲良くするために、
私が折れてあげて、仲良くできるように努力している」
というのもあります。

多くの人たちが、こんなふうに「自分に無理強いして」
あるいは「自分の心を偽って」、仲良くしようと努力します。

けれども、そうすればするほど、相手を嫌いになっていくでしょう。
なぜなら、その行為そのものが、自分の心に適っていないからです。

しかも、他者中心になっていると、
自分が無理をしていることすら気付かない、という人も少なくありません。
物事を「義務」でやっていると、尚更でしょう。

そんな善意を、どんなに発揮したとしても、
それは相手の心に届きません。
むしろ、お互いに、負担になるばかりでしょう。

なぜなら、どんなに顕在意識で努力していたとしても、
無意識に「好かれない」ように行動するからです。

「私はあなたを嫌いだけれども、
私は、あなたが私を好きなるように努力して“あげている”
んだから、私の努力に報いて、あなたは私を好きになりなさい。
でも、私はあなたを嫌いですからね」
こんな矛盾したことをしていれば、相手との関係は、
ますます悪くなるでしょう。

だからこそ、相手のためよりも、自分が自分の心を基準にして、
「私のできる範囲。私が負担に感じない範囲あるいは、
気持ちよくできる範囲」
が大事なのです。

それはつまり、「相手を気にしない範囲」でもあります。

そんな「自分の範囲」を、自分が心から認めることができれば、
それだけで、相手のことで悩む分量は確実に減っていくはずです。