どうして感情を抑えたくなるのか

 悩んでいる人は、どうしても、自分の感情が苦しいために、それを抑えようとしてしまう。

 改めて、マイナス感情を抑えるというのは、どういうことだろう。

 もし仮に、あなたが、うまくマイナス感情を抑え遂せたとして、そのあと、どんなあなたがいるのだろうか。

 あなたは、確かに、マイナス感情を感じないで済む。
 もう、マイナス感情に悩まされずに済む。

「感情を感じない」あなたがいる。

 しかしそれは、プラスの感情も感じない、ということだ。

 プラスの感情や感覚を感じられなければ、生きている喜びも希望も感じられない。
 そういうことだ。

 話は変わるが、悩み多い人は、未来に起こるかも知れないことを恐れたり不安がったり、過去の出来事を引きずったりして、「いまを生きていない」。

 自分の感情を、もっと、その「いま」に、つかうことができれば、感情を抑えることも少なくなるはずだ。

 たとえば、いま、あなたの目の前に、その人がいる。
「いま」を生きることができれば、その人が、自分の目の前にいることも、ありがたいと感じるだろう。

 その人と、会話をする。
 Aについての会話。Bについての会話。Cについての会話。Dについての会話。
 例えば、Aについての会話は、嬉しかった。
 Bについての会話は、楽しかった。
 Cについての会話は、ちょっと不愉快だった。
 Dについての会話は幸せだった。

 こんなふうに、自分の目の前にいる人とのコミュニケーションの中の、ひとつひとつの会話の中にも感情の変化がある。

「いまを生きている人」は、これを感じることができる。

 自分の感情に苦しんでいる人は、感情を抑えようとするが、ほんとうは、自分の感情が問題なのではない。
 問題なのは、その人が、過去や未来に生きて、「いま」を生きることに焦点を当てて感情を感じていない点である。