「隙間家具」人生(2)

 これも本に書いていることだが、そうやって特定の人のために「本来の約束を反故にしてしまう人」というのは、得てして優柔不断である。

 一見、「平気で恋人を優先する」「平気で仕事を優先する」というのは身勝手で、勝手気ままにふるまっているふうに映るかも知れない。
 けれどもこれは立場の違いからそう映るに過ぎない。

 つまり……、

「恋人を優先する人」を、友達の目から見れば、勝手な人に映るだろう。
 しかし、「恋人を優先する人」は、その恋人にとっては“都合のいい人”となる。

 同様に、「仕事付き合いを優先する人」を恋人の目から見れば、身勝手な人に映るだろう。
 しかし「仕事付き合いの人」から見れば、「仕事を優先する人」は、誘うのに“都合のいい人”となる。

 その奥に、「断ることができない。主張できない」という自己評価の低さが隠れている。

 それを断ってしまったら、相手に嫌われてしまう。仕事に遅れをとってしまう、干されてしまう等々の思いである。
 だから、自分より優位に立っている人に対して「断ることができない」。

「責任」ということを無視しても、自分にとって重要な人を優先して、重要でない(と思われる)人のほうを後回しにしてしまう。

 自分では、「大事な人を優先したつもり」でいても、約束を反故にした後ろめたさや、自分より優位に立っている人につい従ってしまう卑屈さが、常に自分について回る。

 どっちに転んでも、それは「自己評価の低さ」につながっていく。

 そんな自己評価の低さが、知らずのうちに「強い相手を優先して、自分を二の次にする」人生にしていく。

 私はそれを、「隙間家具」人生と呼んでいる。

 ご存じのように、部屋の空間の、ちょっと空いたところを有効利用するための家具を「隙間家具」という。

 自分の人生であるにもかかわらず、強い相手を“主”にして、その隙間に自分を入れようとする。

 例えば、
「夫がいると出掛けられないので、いないときに、出掛ける」
「子供がいるので、子供を優先すると、自分の時間はちょっとしかない」
「みんなが残業をしているから、帰れない。みんなが帰れば、私も帰る」
「働いていない私は、家計が苦しいので、一定の小遣いはもらっていない」
「仕事関係の人の予定を把握しておかないと、自分の予定を組むことができない」等々。

 これらも「隙間家具」意識だといえる。

 ある事情のために、一度決めた約束や予定や予約を取り消してしまうということが度々ある人は、自分がそんな隙間家具になっていないかどうかを点検してほしい。

「隙間家具」として生きている限り、他人に振り回されて苦労する人生となる。(終わり)