争わないということ 3

 もっとレベルの高い話になると、相手と自分を比較する。これも、「戦い」の一種です。

「私はあなたより、これができる」
「あの人よりも、私のほうが、優れている」
「私のほうが能力が高いのに、評価してくれない」
 このレベルだったらまだ、相手と戦っていて勝っているか、互角の状態です。

 けれども、すでに負けている状態だと、
「あの人は、あれができるのに、私はできない」
「あの人は、すぐ覚えるのに、私はなかなか覚えられない」
 といったふうに、すでに“負けているところ”を探しては、自分に“負け”の「ダメ押し」をします。

 こうなってしまうと、相手と比較しながら、どんどん自分を否定していくことになるでしょう。
 最初から、必ず負けると決まっている戦(いくさ)に挑んでいるようなものです。

 戦う意識が強いと、負けても戦うことをやめることができないのです。

 こんなふうに、相手と感情的になって戦うというだけでなく、どんな場面でも、頭の中にだれか相手が存在しては、その相手と戦っていたり、戦いに負けている自分を責めたりしているのです。

「戦いから降りる」と決断すると、自分を責めることも少なくなっていきます。

 もちろん、すぐに「降りる」というのは難しいでしょうが、戦わなくても自分を守るスキルがわかれば、わざわざ、戦いを挑む必要もなくなっていきます。

 むしろ、そのほうが、メリットが多いと、きっとわかってくるでしょう。 (おわり)