病気は、「自然力」で治す

病気は、「自然力」で治す

https://news.yahoo.co.jp/articles/0c4d56fb1fcf07d83c29efb4639f32ee21385e9f?page=2

病気を遠ざける「シンプルな方法」
 多くの人は、健康のために何かをしなければならないと思っています。たとえば、「病気になったら薬を飲まなくてはならない」「食事はこういうものを食べなくてはならない」「運動しなければならない」など、「〇〇しなければ……」という考えが強すぎます。病気を防ぐために根本的に行うべきことは、本当はとてもシンプルなことになります。

 最大の病気予防は、特別なものを食べたり、何かを行ったりすることではありません。毎日のくり返しの生活を、「なるべく自然なものにすることにより、からだ本来の働きを高めておくこと」に尽きるのです。

 つまり、日常生活をどう過ごすかで、病気になるかならないか、もしくは病気になってしまっても健康な状態に戻せるかが決まります。

 そして、この自然に沿った生活をもっとも簡単に表現すれば、「腸内細菌を元気にする生活」ということになります。それは、私たちのからだは、じつは腸内にいる微生物がつかさどっているといってもよいからです。こうした微生物を育む生活こそが、病気を遠ざける暮らしの本質だったのです。

 ただし、自然な暮らしに近づけることは大切ですが、「絶対にこうしなければならない」というふうには考えないほうがいいでしょう。

 食事や生活に関してだけではなく、仕事や教育についても同じです。なるべく広い視野、長い目でとらえ、自分のできる範囲で、無理にならないように実践することです。つまり、楽しめることであり、継続して行うことができるように工夫することが大切なのです。

「他者軸」から「自分軸」へ
稲穂の様子を見る本間真二郎医師

 いずれにしても、病気や健康の問題は、突き詰めると、「食」であり、「食」の前にある「農」の問題に行きつきます。そして「農」も、人の「健康」も、そのもっとも大切な部分を支えているのは微生物であったのです。そして、そのことを実践して、確かめるためにこの地へとやってきて15年がたちました。

 さて、ここ数年、新型コロナウイルスの出現、情報化社会の加速、AI(人工知能)の登場など、急速に時代が変化しているのを実感します。新型コロナウイルスに関しては、ウイルス学者として、多くの情報発信する場をいただき、たくさんの反響もありました。

 多くの人々にとって悩ましい数年間でしたが、この期間は、これから急速に変化していく世の中を生きていくうえで、私自身も大きな学びと課題ができました。以前からそうでしたが、新型コロナウイルスの世界的な流行とそれによる社会の大きな変化により、よりはっきりとしたことがあります。

 それは、私たちはあらゆるところを「人まかせ」にしすぎている、つまり、「他者軸に頼りすぎている」ということです。

 たとえば、新型コロナウイルスをもらっても、「感染するのか」「発症するのか」「重症化するのか」「死亡するのか」などは、すべてウイルスという「他者」ではなく、自分の免疫力という「自己」の力により決まります。

 それにもかかわらず、根本的な内なる力を高めることよりも、「人との接触を避け」「消毒をし」「マスクをし」「ワクチンを打つ」という他者軸に頼った感染対策を、私たちは2年も3年も続けてきました。こうした「他者軸」による対策は、感染を防ぐという効果が少し期待できるかもしれません。

 しかし、いっぽうで私たちの免疫力や抵抗力を落としてしまうという側面があるため、すべて根本的な対策ではないのです。その結果、マスクの着用率、ワクチンの接種率も、一時は「世界一」ともいわれてきた日本ですが、感染の拡大がその後も続いてきたことはみなさんが経験したとおりです。

 くり返しますが、何かに頼ること以上にもっとも有効な対策は、感染に対するみずからの力を上げること、すなわち「自己軸」の対策なのです。

 このように、今の世の中の大きな問題には、「自己軸を失っていること」「他者軸に依存しきっている」ということがあると思います。医療に限らず、生活、政治、経済、農業、教育などのあらゆる分野でもそうなっています。

 本来は人まかせにしてはいけない大切なことなのに、社会全体のあらゆるところまで人まかせにしていることが見受けられます。それが、社会のさまざまな問題を引きおこしている要因であることは間違いありません。