ほんとうに女のほうが感情的か? 1

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 一般生活の中で、「自分は強い」あるいは「人と戦っても勝てる」と思いこんでいる人たちがいます。

 けれども「自分が強い」と思い込んでいるそんな人たちは、実は、勝っているわけではなくて、相手が「負けてくれているのだ」ということに気づいていないだけなのかもしれません。

 例えば、夫婦で、(多くの場合)夫が感情的になって一方的に、あるいは支配的に主張したり怒鳴ったとしましょう。

 妻は、途中で、自分の主張を引っ込めてしまいます。

 このとき夫は、自分の言い分が正しいかったから、妻は黙ったと解釈しているかもしれません。けれども妻はそうではありません。

 心の中で、
「これ以上争うのは、しんどい。感情的になるのはつらい」
 そんな気持ちが働いて、途中で止めたのかもしれません。
 決して、夫の言い分が正しいと納得したわけではなく、ただ「争いたくない」からやめたのです。

 夫が「自分の言い分が正しいと思っていること」であっても、もしかしたら、もっと長期的、俯瞰的な見方をすれば、妻の言い分のほうが適切なのかもしれません。

 けれども妻は、感情的になっている夫に、それを説明する心の余裕も時間もありません。
「説明しても無理だ。どうせ、聞いてもくれない」
 あるいは、
「説明しても、理解してもらえないだろう」
 という気持ちから、あきらめて黙ってしまいます。

 それを夫は、
「ほらみろ、やっぱり俺が正しいから、何も言えないだろう」
 と思い込むかもしれません。

 あるいは、妻が論理的に主張して戦えば、夫のほうが間違っていることを知らしめることができるかもしれません。けれども、夫を論破することで、
「傷つきやすい夫の、つらそうな姿をみるのがつらい」
 という妻もいるでしょう。

 自分が強いと思い込んでいる人たちは、決して強いわけではない。相手に勝っているわけでもない。単に、相手が「争いたくないから、負けてくれている」だけだ。

 自分が勝ったと思い込んでいたとしても、それで愛されるわけでもあ
りません。

 自分が強いと思い込んでいる人自身が、そんな視点で自分を見詰めることができれば、争って勝っても無意味だということに気づくかもしれませんね。 (つづく)